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「自尊心強い脱北者、韓国では無視され米国では支援不備に絶望」

ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版2013.10.02 17:33
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あの辺りに豆満江(トゥマンガン)があるはずなのに。ウォンチョルの背中には10歳にもならない妹のククファが背負われてむずがっている。川を渡って中国に行かなければならない。母は離れていった。「これからはお前が妹弟たちの父親だ」という手紙だけが残った。弟のチェチョルは体の具合が悪いククファのせいで速度が落ちると不満を言いながらも、ククファに食べさせるドングリを探すのに鼻を地面にすりつけるように歩く。ウォンチョルは決心する。お腹が減ることに苦しめられて徐々に死ぬよりはむしろマシだろう。母が残したスカーフを取り出してククファの首を絞める。

韓国系米国人作家クリス・リー氏の短編デビュー作『漂う家(Drifting House)』のあらすじだ。フィクションだが現実感があふれている。リー氏は米国で人権活動家である友人に感服して脱北者を助ける仕事をしてきた。数千ドルの私費をはたいて中国延辺近くの安家(安全家屋、Safe House)に閉じ込められていた脱北者のソウル行きを助けて殺害の脅迫を受けたこともある。脱北者を募金活動に利用しようとしていた宣教師らと対立して広がったことだった。

 
小説素材のために脱北者に会ったのではなかった。しかし脱北者への関心が自然にペンをとらせ『漂う家』は昨年の英語圏文学賞「ザ・ストーリープライズ」のスポットライト部門を受賞した。今月初めからは延世(ヨンセ)大学アンダーウッド国際学部教授に任用された。脱稿中の作品も国境地帯の脱北者の話だ。

デビュー作に掲載された9つの短編のうち「世の中の終わりで」は、カリフォルニアに定住した脱北者家族の話だ。学校では「マーク・リー」、家では「イ・ミョンソク」である9歳の少年の視点から米国社会に溶け込めない脱北者家族の葛藤を淡々と描いた。27日、延世大研究室で会った彼女は「脱北者が米国に入ってくる数字も少ないが、入ってきても支援プログラムがまともに用意されていない」と指摘した。彼女は「米国が北朝鮮人権法を通過させて大々的に宣伝しているが、実際に脱北者が米国で合法移民で来るには基本1年は待たなければならない。脱北者は米国でも悩みの種だということ」としながら「私は米国を愛する米国市民権者だが、このような偽善は明らかに間違っている」と断言した。

難民の地位で米国に入ってきて言葉の問題などで現地への適応に失敗して自殺を選んだ人もいる。彼女はこのように付け加えた。「長い過程を耐えて米国市民になったが結局、現地社会に溶け込むことができなければ苦しみは倍増する」。それでも韓国ではない第3国行きが続く理由は何か。リー氏は“関心”から端緒を見出した。「韓国で脱北者は『支援金ももらって良いだろう』という皮肉や無視ばかり受ける。脱北者は『自分は恐れを踏み越えて生き残った』という自負心がとても強いが、こういう無視にあえば耐え難い」と指摘した。そんな脱北者が外国で『人としての扱いを受けるのだという考え』にわだかまりが和らぐということだ。彼女は「私たち皆が『漂う家』だ。米国移民者も、片腕をなくして生きるようなアイデンティティの危機を体験する。韓国だけで生きてきた多くの人々にもアイデンティティは悩みの対象だ。重要なことは、偏見を捨てて互いに“人”として相対して心を開くことだ」と強調した。

(中央SUNDAY第342号)

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