望遠鏡をのぞき見ていたイタリアの天文学者ジョバンニ・スキアパレリが火星の表面に刻まれた長い線を見つけた。たぶん彼の見たものは長さ6000キロのマリネリス峡谷だったのだろう。この知らせは全世界に火星熱風をもたらした。「火星に人工運河がある」という報道が広がり、運河を作った火星人が生きているのだという推測が広がった。火星人が地球を攻撃する内容の小説が出たのもこのころだ。しかしこれは筋を意味するイタリア語カナリ(canali)が英語の運河(canal)と誤って伝わってもたらされたハプニングだった。1日が大きく進化する宇宙科学の発展の速度を勘案すれば虎がタバコを吸っていた時代の1877年の話だ。しかし運河はまだしも火星に水が存在したという仮説は120年後、火星探査船が送ってきた写真で既定事実化された。水があったという話は生命体の存在可能性と直結される。