諸葛孔明は司馬仲達にとって一生越えられない壁だった。対する戦闘のたびにいつも苦汁を飲まなければならなかった。いくら知恵を絞り取ったところで孔明の神妙な策略に適う方法がなかった。部下の将帥や軍士たちさえ「孔明の手の方がずっと先をいく」とつぶやく。最後の戦場となった五丈原では死んだ孔明に愚弄されるという侮辱まで経験する。仲達は当時、敵軍が後退するという消息に孔明の死を予感し、慌てて後を追った。ところが不意に四輪車が現われるとその上に座った木像が生きている孔明であると思って50里もみじめな姿で走り去ると「私の首はまだ付いているのか」と問う。「死んだ孔明が生きた仲達を追う」という有名な故事だ。