【コラム】混沌の時代、どのように備えるべきか=韓国(2)
ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版2025.03.16 13:25
経済学では人間の選択を相対価格に反応しこうした反応が相対価格を変動させる相互作用を通じて分析する。消費者としての個人や多くの生産者の1人としての企業は相対価格に反応するが、これを直接的に変動させることはできないのが一般的だ。相対価格を変動させる権限は(国民が委任した)国家機関だけができる。こうした権限を財政政策や通貨政策、または金融政策の領域と呼ぶ。
国家機関が国の内部で相対価格を変えるのももちろん難しいことだ。税金をだれが出すかと年金制度をどのように設計するかの問題の正解は常にない。通貨政策と金融政策の問題も例外ではない。ガバナンスが比較的うまくいっている国の国内政策でもこうした国同士の政策の問題で相対価格を変えるのははるかに難しいだろう。国内ガバナンスで互いの信頼が必須であることをわれわれはあまりにもよく知っている。最近司法の信頼がまさにこの事実をわれわれにあまりにも苦しく教える現実だ。
ある国の中での信頼がこのように難しければ国同士の信頼、あるいは国民間の信頼を見いだすのは縁木求魚かも知れない。それにもかかわらず、世界経済は流れていく信頼を持って各国は経済政策を遂行する。国同士の相対価格を変動させられる最も強力な手段は関税だ。世界大戦から80年間で関税は次第に低くなってきたが、いまはその反対方向に動いている。これに対する対応が必要な時期だ。米国大統領選挙当時の昨年11月に予想した政策を基準点に置いてみると、それよりさらに強く進められる米国の関税政策は世界経済をそして韓国の成長率を来年0.4ポイント引き下げかねないと韓国銀行は分析した。さらに重要なのはこのシナリオで米国の成長率が0.8ポイント低くなる点だ。
もちろんこれは米国の政権が意図するところではないだろう。それでも経済政策では常に「意図していなかった結果」が発生するのはわれわれがだれよりもよく知っている。米国の成長率が低くなりインフレが高まればこれを国同士の相対価格のミクロ的変更手段が関税ではなくマクロ的変更手段である為替相場を通じて調整しようとする試みが出てくるリスクが十分に隠れている。これに対する備えは外国為替当局と通貨当局だけでなく、みんながどれだけ多く心配しても行き過ぎではないと考える。
キム・ジニル/高麗(コリョ)大学経済学科教授
【コラム】混沌の時代、どのように備えるべきか=韓国(1)