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【時視各角】『帝国の慰安婦』事態を読む

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.11.03 09:29
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大法院判定が下されたものの、心からすっきりとしない。今のところは判決に対する大衆の反応が交錯している。先月26日、大法院(最高裁)は朴裕河(パク・ユハ)世宗(セジョン)大学名誉教授の著書『帝国の慰安婦』が慰安婦被害者の名誉を傷つけていないという結論を下した。2審有罪を覆した大法院無罪判決に関連して、中央日報紙1日付の朴教授のインタビュー記事にはこのようなコメントがあった。「もうすぐしたらテロリスト安重根(アン・ジュングン)・金九(キム・グ)、このような本も登場するかもしれない」。こんなコメントもある。「私たちが知っていると思っていたものの裏には不都合な真実がある」。朴教授を擁護したものとみられる。YouTubeに掲載された先月27日のMBC(文化放送)ニュースの映像に書き込まれたコメントは朴教授批判一色だ。「すごい大韓民国裁判所だ」。最も礼儀正しいコメントだ。大韓民国がどれくらい二分されているかをこれらのコメントは鮮明に教えてくれる。

市場は少し動いた。『帝国の慰安婦』の出版元によると、大法院の判決直後、在庫300部がすべてなくなり、増刷に入った。だが2013年の出版以降、今までの販売部数は1万冊にすぎない。出版翌年には名誉毀損で告訴され、2015年「問題になる」部分34カ所を削除して出版するよう仮処分が下された、ノイズマーケティング効果はなかったものと見なければならない。『帝国の慰安婦』はなぜ非難され売れない本になったのか。

 
本について罵る人も朴教授の真意をすぐには否定しがたいはずだ。国内慰安婦議論を運動団体が主導したところ、日本に犯罪責任を負わせるという極めて難しい目標達成に偏り、その結果韓日両国の仲が悪くなったというのが朴教授の問題意識だ。ところで朴教授は文学人だ。翻訳者だ。日本の小説家山田詠美の成長小説集『風葬の教室』を感心しながら読んだことがある。翻訳者が朴教授だった。すばらしい翻訳小説は原作がまず良作でなければならないが、翻訳がこれを支えなければならない。朴教授は『帝国の慰安婦』にあふれた左派知識人の非難コメントに対する反論文を集めた本『「帝国の慰安婦」、知識人を語る』で人間と文学をこのように定義した。

「文学というのは(…)単一の思考では計り知れない複雑な心理と感性を持っている人間が作った過去と現在はもちろん、その過去と現在がそこまで認識できなかった構造まで考察しようとする学問でもある」

このようなアプローチ法で単一ながらも極端な慰安婦像、すなわち「まだ幼い10代のときに、自身の意志とは関係なく『日本軍に強制的に連れて』行かれて、奴隷のように性を蹂躙(じゅうりん)された朝鮮の少女」にヒビを入れたため思わぬ事故が起きる。日本軍との同志的関係、なぜ芽生える恋愛感情、さらに自発的な売春…。ハラハラして読むことになる。

表現の自由をできる限り擁護した大法院の決定が朴教授にとっては焼けるような日照りの末に降った恵みの雨も同然だったに違いない。だが、スポーツに例えるなら今やっと予選を通過したばかりだとみなければならない。さらに厳しい本戦が待っている。市場での成否(もっと多く売れて世論を勝ち取らなくてはならない)、同僚学者からの認定のような事柄だ。

「著者・朴裕河」に温情的な人々でさえ『帝国の慰安婦』を積極的に評価しようとしない。ある重鎮の文人は「本の全般的な基調は正当だが、曖昧な表現が至るところにある」とした。朴教授の立場は結局、今後健全な韓日関係のためには極端な反日という民族主義フレームから我々が抜け出さなければならないということだ。だが、脱民族主義談論に長く身を置いているある人文学者の反応は手厳しいものだった。「慰安婦運動団体のようなナショナリストに対してはるかに深刻かつ複雑に問題を提起できたはずなのに、朴裕河がこれかあれかの単純な戦いにしてしまって局を台無しにした」ということだ。

このような視線が、著者朴裕河が今後越えなければならない障害物ではないか。

朴教授側は削除された34カ所を復活させる仮処分異議申立を行う計画だという。そうするべきだ。今のように34カ所が「○○○○」処理されていては、批判するにしても擁護するにしても『帝国の慰安婦』を本来の形で読むのが難しい。

シン・ジュンボン/文化ディレクター

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