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【コラム】北朝鮮の挑発の危険性を高める食料難

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.02.27 11:53
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1990年代の北朝鮮の大飢饉の余波を直接目撃したのは、2007年に咸興(ハムフン)に行った時だ。平壌(ピョンヤン)を初めて抜けて咸興の道路で見た人たちは平壌の市民に比べてはるかに小さく痩せていて、顔色もよくなかった。スカート姿の女性の足は串のように細かった。1990年代に生まれ、幼い頃に大飢饉を経験しながらも生き残ったが、栄養失調と発育不振でまともな生活を送れなかった。

飢謹はこのように残酷だ。専門家らはまた大飢饉の影が北朝鮮にちらついていると警告する。北朝鮮政権もこれを認知していたようだ。2021年4月から金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は労働党細胞書記大会を通じてもう一つの「苦難の行軍」を警告した。同年6月には第3次労働党全員会議で食料危機を、同年12月には労働党中央委員会で食料安全保障の重要性を力説した。それでも状況は悪化した。大韓民国農村振興庁の2022年12月の資料によると、北朝鮮の2022年の食料作物生産量は前年比18万トン減少した。

 
状況は今年に入って基本的な需要さえ充足できないほど悪化したようだ。食料不足で北朝鮮の基本食品の価格がドル基準で韓国よりはるかに高くなった。南北の基本所得格差をみると、どれほど状況が深刻かが分かる。食料配給自体が公平に行われていないうえ、北朝鮮内の地域による食料の価格差が大きく広がった。今の状態が続けば最悪の飢餓状態に向かうと、専門家らは警告する。

食料難が深刻なのは政治的な余波が大きいからだ。90年代の大飢饉で北朝鮮住民の指導部に対する信頼が大きく揺らいだ。民心が動揺して脱北者が増え、北朝鮮政権に対する信頼が崩壊したという不満があちこちから出てきた。また飢餓が北朝鮮に広がる場合、政権に対する住民の信頼がまた崩壊する結果につながる。金正恩委員長は最初の演説で二度と苦難の行軍はないと約束したからだ。また飢餓を迎えれば、金委員長の約束を信じた人たちの信頼を踏みにじることになるだろう。約束が守られなかった責任も金委員長が負うことになるはずだ。

北朝鮮が世界食糧計画(WFP) に食料援助を要請したが、北朝鮮内部のモニタリングなしには援助に応じるはずがない。中国もコロナ以降、国境再開放で食料の受給に困難があり、支援は不確かだ。北朝鮮政権が手を打つにはすでに手遅れの災難が目の前に近づいているのかもしれない。

また飢餓に直面すれば政権に対する強い反発につながる可能性がある。1992年に不満を抱いた軍将校が閲兵式でタンク砲弾を撃ち、指導部全体を射殺しようとしたように、今回もそうならないとは断定できない。集団農場で食料の不正流通が増え、家族を養うために非公式的な貿易活動をするのに力を注ぐだろう。これはすでに弱まった北朝鮮党組織の機能が停止することもあるということだ。この場合、高官級の党指導部の地域訪問自体が危険になる。

飢餓だけの問題ではない。コロナ危機が続く中、北朝鮮は18日に大陸間弾道ミサイル(ICBM)で挑発したが、韓米軍事訓練を阻止できないことに不安感が強まるだろう。昨年10月、金委員長はもう一つの護衛隊を創設し、韓国文化の蚕食を防ぐための努力を強めている。

そうでなくとも扱いが難しい北朝鮮はさらに厄介になるだろう。今のように政権が脅かされれば本能的に中に隠れて外部との接触を断つからだ。金与正(キム・ヨジョン)副部長は19日、いかなる対話もする意思がないという点を明確にした。

北朝鮮政権の行動も気まぐれだ。金委員長の幼い娘を前面に出し、顔が入った切手をつくるという行動は奇異だ。金委員長が故金正日(キム・ジョンイル)総書記の忌日(12月17日)と生誕日(2月16日)に錦繍山太陽宮殿を訪れなかったのも普通でない。規則・伝統・予測の可能性にすべてを頼っている北朝鮮の政治体制でこうした行動は、政権維持に必須の軍幹部の忠誠心を揺るがすこともあるからだ。このように不安定な時期であるほど北朝鮮政権は何か愚かなことをするかもしれない。

ジョン・エバラード/元平壌駐在英国大使

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    イラスト=キム・ジユン記者
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