韓国下着メーカー大手のサンバンウルグループの不正と野党「共に民主党」の李在明（イ・ジェミョン）代表関連の弁護士費代納疑惑捜査の途中で海外に逃避したキム・ソンテ前会長（５４）が北朝鮮の金正恩（キム・ジョンウン）国務委員長にエルメスの高級鞍（サドル、馬具の一種）を贈ったという疑惑を検察が追っていることが確認された。

◇「キム・ソンテが金正恩に鞍を贈った」証言

１６日、韓国法曹界によると、水原（スウォン）地検刑事第６部（部長キム・ヨンナム）はキム前会長が２０１９年１１月に所属役職員を動員して中国で北朝鮮の要人と接触し、エルメスが製作した高級乗馬用鞍を持たせたという情報を入手し捜査している。世界的な高級ブランド「エルメス」はカバンなど装身具類で有名だが、本来は高級乗馬用鞍メーカーとして出発した。今でも注文製作という形で職人が１対１のオーダーメイドで作った高級鞍を販売している。

サンバンウルの関係者は検察に「キム前会長とその側近が金正恩委員長に乗馬用の鞍を贈ったと話していた」と証言した。乗馬は北朝鮮では最上流層だけができる高級スポーツだ。検察捜査でキム前会長が鞍を渡した事実が最近明らかになると、キム前会長の北朝鮮高位層への贈り物であるという観測が出ていたが、北朝鮮権力の頂点にいる金正恩委員長らいわゆる「白頭（ペクトゥ）血統」がその受け手で、この鞍が高級ブランドであるという事実が明らかになったのは今回が初めてだ。

キム前会長はエルメスの鞍の価格に対しては周辺に口を閉じたという。エルメスの鞍は少なくとも数百万ウォンから最大で数億ウォンに達する。金正恩委員長のための鞍である点を考慮すれば数千万ウォンから数億ウォン台はくだらないだろうと周辺は推測したという。もしキム前会長が金正恩委員長にエルメスの鞍を上納したことが事実なら、北朝鮮に対するぜいたく品搬出を禁止した国連安保理決議第１７１８号に抵触している可能性がある。

検察はキム前会長側が２０１９年１月に中国で北朝鮮の要人と会って４回にわたって１５０万ドル（現レートで約２億円）を伝達した情況も明らかになり捜査を進めている。この過程でサンバンウルは役職員数十人を動員して個人の持ち物に隠して出国する方式で外貨を引き出したという。検察はサンバンウルが北朝鮮での事業権を獲得するためにアジア太平洋平和交流協会と組んで北朝鮮に高級上納品と外貨を渡したとみている。

◇海外逃避のキム・ソンテ前会長、検察に「交渉」持ちかける

海外逃避中のキム前会長は最近検察に「李在明代表に関連した陳述をするので、サンバンウルの不正は大目に見てほしい」という趣旨で交渉を持ちかけているが、検察は「交渉は不可」という立場を守っている。キム前会長は「私と癒着している検事がいる。検察が私のことを捜査するなら、検事の名前を暴露する」と言って検察を圧迫していることが把握された。しかし水原地検はすべての疑惑を厳正に捜査するという立場だ。

検察関係者は「キム前会長が北朝鮮事業で株価を引き上げる一方、次期政府での南北和解ムードを利用して会社規模を拡大しようとしたと推定される」と話した。サンバンウル側はキム前会長に関連した疑惑に関連して「会社次元で事実関係の把握ができないため立場を明らかにすることはできない」と明らかにした。