「金正恩が王? ただの太り過ぎ」…平壌小説を書いた英国作家「ファクト暴力」
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2022.11.15 08:35
ある旅は人生を変えことがある。英国小説家マーセル・セロー氏にとっての2018年北朝鮮旅行はまさにそれだった。1968年生まれのセロー氏はケンブリッジ大学で英文学を、イェール大学で国際関係学を学んだ後、作家の道を歩いてきた。ニューヨーク・タイムズ(NYT)が「含蓄のある」と評価したセロー氏の作品はそのほとんどが哲学的メッセージを含んでいてSF的な要素が散りばめられている。村上春樹氏が日本語で翻訳し、韓国にも紹介された『極北』もそうだ。しかし、セロー氏が平壌(ピョンヤン)と馬息嶺(マシクリョン)スキー場など北朝鮮に行ってきた後に書いた小説は色彩が全く違う。英語の原題は『The Sorcerer of Pyongyang(平壌の魔術師)』で、北朝鮮のある平凡な少年が外界に目を開くことになる過程をドラマチックに描き出している。北朝鮮旅行はセロー氏に作家としての新たなページを開いてくれたことになる。セロー氏は中央日報との最近の電子メールインタビューを通じて「私にとって北朝鮮は不思議ではあるが馴染みのあるところ」としながら「私が1980年代に訪問した旧ソビエト連邦(ソ連)と2018年の北朝鮮は微妙に似ていながらも違っていた」と話した。
セロー氏の名前はフランス式だが、生まれはウガンダ、育ちは英国と米国だ。著名な旅行作家であり小説家である父親のポール・セロー氏の影響だ。イェール大学で国際関係学を学びながら深く掘り下げたテーマはソ連。セロー氏にとって北朝鮮が特別な意味を持つ理由だ。セロー氏は「北朝鮮は失敗したマルキシズムを崇拝する地上最後のカルト政権」としながら「〔金日成(キム・イルソン)〕バッジから全体主義的ポスター、過酷な刑罰など、人間の心を政権が統制しようとする試みが依然として作動している」と話す。人の心を国家が統制するということの非人間性を魔法と幼い少年という装置を通じて心の奥深くまで訴えかける。英国ガーディアン紙は「全体主義政権の虚像を指摘した秀作」と評した。2009年には『極北』で全米図書賞の最終候補作に選ばれた。これに先立ち、セロー氏はサマセット・モーム賞とSF作品に与えられるジョン・W・キャンベル記念賞なども受賞している。