尹錫悦（ユン・ソクヨル）大統領とバイデン大統領は２１日、ソウルで韓米首脳会談を開き、「戦略的経済・技術パートナーシップ」に合意した。経済・産業分野で注目されるのは原発輸出と為替市場での協力の２つだ。

◆韓米「原発輸出で協力」…露中牽制用

昨年５月に米国で開催された韓米首脳会談の共同声明でも原発協力への言及があった。ただ、「原発事業共同参加を含む海外原発市場での協力を発展させていくことを約束した」という一文にすぎなかった。

今回の首脳会談は違った。共同声明に▼原子力輸出振興と力量開発手段共同使用▼回復力ある原子力サプライチェーン構築▼小型モジュール型原子炉（ＳＭＲ）など先進原子炉開発協力▼原子力高官級委員会の活用－－など具体案が盛り込まれた。脱原発を強調した１年前の文在寅（ムン・ジェイン）政権での韓米首脳会談とは温度差が大きかった。

大統領選挙当時から「脱原発白紙化、原発輸出強国」に焦点を合わせた尹錫悦政権の政策基調が今回の首脳会談でもはっきりと表れた。尹大統領は当選後も「２０３０年までに原発１０基を輸出し、雇用１０万件を創出する」と話していた。

以前と大きく変わった国際情勢の影響もあった。今回の首脳会談でさらに強まった韓米原発輸出同盟は、過去１０年間にわたり世界原発輸出市場を掌握してきた中国とロシアを牽制する性格が大きい。特にロシアはウクライナ侵攻による経済制裁で新規の原発建設受注がほぼふさがった状況だ。

サウジアラビアのほか、チェコ、ポーランドなど新規原発を推進している国がロシアを排除する可能性が高い。新型コロナ拡大とウクライナ戦争が招いたエネルギー難のため欧州などで新規原発の需要が増加しているのも、韓国産原発の輸出、米国との原発協力に対する期待を高めている。

しかし今回の合意が「バラ色の未来」を保証するわけではない。韓国の原発輸出において米国は強力なライバルでもある。２００９年にアラブ首長国連邦（ＵＡＥ）原発建設事業を韓国電力コンソーシアムが受注する際、米ウェスチングハウスが参加したが、１回目の審査で脱落し、一歩遅れて合流した。ウェスチングハウス合流後にも韓電コンソーシアムは米ＧＥ・日立コンソーシアム、仏アレバコンソーシアムと激しい競争の末に受注に成功した。

朱漢奎（チュ・ハンギュ）ソウル大原子核工学科教授は「今回の首脳会談で両国が原発をクリーンエネルギーと認め、原発輸出とＳＭＲなど技術部門で協力していくと明らかにしたのは非常に意味のある進展」とし「結局、サウジやチェコなど今後予想される原発受注競争において、どの部分で協力して譲歩していくかは両国の個別企業が決定すべき問題」と述べた。ＳＭＲ分野でも両国は協力を強化することにしたが、商用化と大規模な輸出産業化はまだ先の話だ。

◆ウォン安ドル高…韓米「為替市場で協力」

韓米首脳会談の共同声明の中にはそのほかにも目を引く部分がある。「為替市場の動きに関連し、緊密に協議していく必要性を認識した」という部分だ。１年前の韓米首脳会談当時にはなかった。その間に厳しくなった国内の為替事情が反映された。

１ドル＝１３００ウォン台に迫る危機状況であり、韓米通貨スワップをまた締結すべきだという市場の要求が強い。しかし今回の首脳会談では議論されなかった。ドルと別の通貨を交換（スワップ）するかどうかは全面的に米中央銀行の連邦準備制度理事会（ＦＲＢ）が決定する事案だ。

高麗大のキム・ジンイル経済学科教授は「関連の文言が共同声明に入ったのは、為替市場の協力において始まりにすぎない」とし「この文言がどんな方法で具体化していくかは、韓米通貨当局が意思疎通して交渉していくべき部分」と指摘した。

現在、米国と通貨スワップを締結している国はユーロ圏、英国、カナダ、スイス、日本にすぎない。すべて基軸通貨国に準ずる地位の国だ。米国は韓国、オーストラリア、デンマークなど他国とも通貨スワップを締結したことがあるが、２００７－０８年グローバル金融危機、２０２０年のコロナ危機など経済危機当時に一時的に取った措置だった。

延世大のキム・ジョンシク経済学部名誉教授は「共同声明に含まれた為替市場協力内容は非常に包括的な内容にすぎない」とし、通貨スワップに関しても「米国は国際通貨を持つ国だけと常時通貨スワップをし、特定の国と限定的に一時的な通貨スワップをした前例は少ない」と指摘した。

続いて「韓米為替市場の協力をさらに強化するためには、現在の金融当局の国際金融関係者が前に出る必要がある。２００８年に通貨スワップが実現した当時のように、人的ネットワークを持つ実務者が積極的に協議をする必要がある」と強調した。