【社説】「金メダルのような4位」一層成熟した五輪文化=韓国
ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版2021.08.08 10:25
小説家の朴婉緒(パク・ワンソ)が1977年に書いたエッセー『びりに送る喝采』がある。ある日偶然にマラソン競技を見物した話者は、最下位走者の「正直に苦痛な」「正直に孤独な」顔に胸を打たれる。結果と関係なく最善を尽くす選手を応援する。1位だけ羨望する、勝者が全てのものを占める成績至上主義に対する隠喩であり無限競争時代に対する風刺だ。
それから40年余りが流れたいま、韓国社会は最下位を新たに見ている。あす17日間の長征に終止符を打つ東京五輪でこれまで落伍者の境遇だった最下位にも満場の拍手が起こった。初めて出場した五輪で参加12カ国中12位で競技を終えた男子ラグビー代表チームが代表的なケースだ。「五輪精神そのもの」のような激励がオンラインを染めた。世界の強豪を相手に不屈の闘志を燃やした選手たちに「美しいびり」という称賛が相次いだ。国威宣揚のような名分の代わりにスポーツそのものを楽しむ文化が定着しつつある。
特に今回は「4位の躍進」が目立っていた。「ノーメダル」にとどまったが自分の限界に果てしなく挑戦する選手たちが輝いた。以前の五輪ではほとんど見られなかった風景だ。男子走り高跳びで235センチメートルの韓国新記録を立て4位に上がったウ・サンヒョクは競技後「幸せな夜だ。残念だが後悔はない」と話した。ファンらも「私の心の中の金メダル」 「陸上の面白さを知った」という応援を惜しまなかった。男子飛び込み3メートルで歴代韓国ダイビング最高成績を記録したウ・ハラムはどうか。「五輪4位そのものが栄光」と話した。表彰台に立つことができなかった失望と憤怒はなかった。1位コンプレックス、メダル万能主義を一気にひっくり返したKO勝ち、一本勝ちのようだった。