韓国国内最大のインバウンド（外国人対象の国内旅行サービス）旅行会社ニューファチョンのウ・ソンドク代表は３１日、中国行きの飛行機に乗った。この日の「韓中関係改善関連の両国間協議」発表の直後、飛行機のチケットを購入した。ウ代表は北京・上海で現地旅行会社やチャーター機のエージェンシーなど１０カ所余りを回って協議する予定だ。

ウ代表は「旅行会社の立場では韓中関係改善の発表を事実上ＴＨＡＡＤ報復が解除されたものとみている」とし「すぐに中国人観光客（団体旅行客）を誘致するための手続きに入る」と述べた。続いて「早ければ１１月末、遅くとも１２月中旬には１チーム以上が入ってくるだろう」と話した。昨年ニューファチョンは月平均中国人観光客１０万人を誘致したが、その後は限韓令のため苦労してきた。ウ代表は「まずは年末までに１万人が目標」と話した。

「韓中関係改善関連の両国間協議」発表に産業界は喜んだ。特に旅行・観光業界が迅速に動いている。ニューファチョンのような中国専門旅行会社１８０カ所は事実上中断していた活動をすぐに再開した。限韓令が本格化した３月以降、国内の観光業界は冷え込んだ。

個別の中国人旅行客は時々見られたが、多くの中国人観光客は日本へ向かった。免税店の売上高は代理購買の誘致で何とか維持したが、大幅に割引をする苦肉の策だった。ロッテ免税店の関係者は「万全の準備をしているが、客が入ってくるまでは時間がかかるはず」と伝えた。

旅行客の減少で支障が生じていた航空便も正常化する見通しだ。中国発の済州（チェジュ）行きチャーター機が先に再開された。中国春秋航空は３月に中断した済州－寧波路線をこの日再開した。吉祥航空も済州－上海路線に１２月２８日から週３回ずつチャーター機を運航する。中国人観光客の減少で地域経済に大きな打撃を受けていた済州はお祭りムードだ。すぐに済州市蓮洞（ヨンドン）の新羅免税店に変化が生じた。この日、個人の中国人観光客や商売人など数百人が免税店を行き来しながら忙しくショッピングをした。ＴＨＡＡＤ問題が浮上する前に戻ったようだ。

北京発仁川（インチョン）・済州（チェジュ）行きの便数を減らしていた韓国の航空会社も近く路線の正常化に合流する。大韓航空の関係者は「両国交流正常化協議を歓迎し、持続的に状況を注視しながら路線の正常化について検討を進める」と述べた。

「中国版ブラックフライデー」の光棍節（独身者の日）が１０日後に迫った時点であり、プラスの影響を及ぼすとみられる。業界では悪化した韓中関係のため、今年の光棍節期間の対中国売上高は例年を下回るという見方が多かった。しかし解氷ムードが形成され、韓国企業も売上反騰を狙っている。今年の光棍節の売上高は２４７９億元（４兆２８００億円）と予想されている。

ＫＢ証券のハン・ジョンスク研究員は「韓中関係が最悪の状況を乗り越えたうえ、光棍節は中国当局の規制が少ないオンラインショッピングが中心であるため、今年も期待できるだろう」と述べた。また「昨年はおむつ・粉ミルク・スキンケア・腕時計などを中心に韓国製品がよく売れたが、今年は電子機器が好まれるだろう」と予想した。

ＴＨＡＡＤ配備場所を提供したことで中国事業に直撃弾を受け、ロッテマートを撤収させたロッテはこの日、歓迎の立場を表した。「今回の協議でロッテを含む企業の活発な活動が再開されることを期待する」とし「正常化のために積極的に努力する」と明らかにした。ただ、「ロッテマート売却の件はすでに進展し、変動なく進めていく計画」と強調した。

中国で苦戦している自動車業界も期待を抱いている。現代・起亜車の関係者は「両国間の動きが中国市場での販売回復につながることを期待している」と述べた。ただ、両国間の関係改善がそのまま販売増加につながるという保証はなく、ＴＨＡＡＤ配備以前の水準に販売が回復するには時間がかかるという意見も多い。韓国自動車産業協会の関係者は「販売を完全に回復するためには関係改善だけでなく、新車の投入やサービス改善など自動車会社のより多くの努力と奮発が求められる」と話した。