ソマリア海賊の登場よりはるかに前の15世紀にもアフリカ航海は恐怖そのものだった。ヨーロッパ人が東方の香料を手に入れて大金を稼ぐには、アフリカ南端を回る新しい航路を切り開かなければならなかった。しかし大西洋に入ってすぐに直面する渦や暗礁、大きな怪物が潜んでいる‘暗黒の海’があるという伝説が障害になった。ポルトガルのエンリケ王子が10余年間、巨額の私財を投じて出港させた船団も、何度も怖気付いて引き返したりした。「いかなる危険も大きな報奨への希望を越えることはない。勇気を振り絞れ」。1434年、王子の命令を受けたジル・エアネスがついに恐怖を克服してボハドル岬まで航海するのに成功した。ヨーロッパに「大航海時代」の幕が開かれた劇的な瞬間だった。