北朝鮮から脱出したいわゆる「脱北者」を装ったスパイの実体が２７日、当局の合同捜査により明らかになった。

特に今回摘発された女性スパイ、元正花（ウォン・ジョンファ）容疑者は、脱北者の定着を支援する政府の支援プログラムを身分の偽造に悪用して政府支援金まで受領、スパイ活動を展開していたという点から、当局の防諜活動に対する疑念が浮上している。

「朝鮮族」と装って韓国人男性と結婚し韓国入りした元容疑者は、０１年１１月、国家情報院（国情院）に脱北者を装って入国申告した。

政府は脱北者らに▽政府合同尋問機関の捜査→ハナ院（脱北者の定着を支援する施設）入所後の教育→定着後には所轄警察による動向把握や支援－－などを受けさせている。

テソン公社と呼ばれる政府合同尋問機関では、国情院、警察、情報司令部、国軍機務司令部などから派遣された担当者が、短くは１週間から長くは１カ月にわたって脱北者の身元情報や経歴などを取り調べる。

元容疑者も偽装申告の直後、合同尋問の過程を経たが無事通過した。続いて元容疑者は０２年１月２３日から脱北者教育施設のハナ院で約８週間にわたり社会適応教育を受けた。

元容疑者は０２年３月１９日、ハナ院を退所すると同時に合法的な身分を獲得した。政府が脱北者に支給する各種の支援金も結果的にスパイ活動の経費に使われた。ハナ院を退所した後、先月まで元容疑者が受けていた定着金、生計費など各種支援金は計９０９０万ウォン（約９００万円）にのぼる。

脱北者を装ったスパイが情報当局の監視網をかいくぐった後に摘発された背景には、かつての進歩政権が北朝鮮との関係ばかり意識し、防諜分野の管理を疎かにしたためだ、という見方も出ている。