「窓側には絶対に座らなかった」…韓江氏の目撃談に賑やかになったソウル西村
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2024.10.15 14:06
韓国人として初めてノーベル文学賞を受賞した小説家・韓江(ハン・ガン)氏(54)の息遣いが感じられる場所に沿って市民の「文学聖地巡礼」が続き、ソウル鍾路区西村(チョンノグ・ソチョン)一帯が賑やかになった。西村は韓江氏のソウルの自宅と韓江氏が運営する本屋が位置した地域だ。
14日午前に訪れた韓江氏の自宅兼作業室と知らされた韓国式家屋住宅の門は堅く閉ざされていたが、前日まで家の前に並べられていた文学関連団体・財団の祝賀の花輪や花束は消えていた。これに先立ち、週末だった13日、同地の近くを通りかかった観光客は韓江氏の自宅という話にしばらく足を止めて仲良くひそひそと本の話を交わしたり認証写真を撮ったりしていた。
京畿道盆唐(キョンギド・プンダン)から妻とともに西村を訪れたハン・ジェウォンさん(65)は「普段から韓江氏のファンなので良い気勢をお裾分けしてもらおうと韓江氏の本屋から家の前まで足跡を辿ってみた」とし「ここまで来たついでに尹東柱(ユン・ドンジュ)の下宿場所・李箱(イ・サン)の家など西村に散在する文学関連スポットを訪れて楽しい時間を過ごしている」と話した。デートに来たイさん(28)も「西村によく遊びに来ているが、今回は感慨も新たにしている」とし「過去の芸術家が残した足跡に沿って見て回っている」と話した。
この日、韓江氏が自宅に近い通義洞(トンウィドン)で運営する独立書店「本屋オヌル」(「オヌル」は今日という意味)は休業状態だったが、記念写真を撮ろうとする市民で大変なにぎわいだった。これに先立ち11日、本屋オヌルは受賞発表後に殺到した人々と取材陣に「当面本屋は休む」とし「再びオープンする日は後で公示する」とSNSを通じて臨時休業の便りを伝えた。一部の文学ファンは韓江氏の本を持って本屋の前に集まって記念写真を撮ったりもした。本屋の看板の下で記念撮影をした毋岳洞(ムアクトン)の住民キムさん(70代)夫婦は「文学界の慶事であり韓国の慶事」と感激した様子だった。
本屋のドアの前には市民の花束と「病気で佗びしい時期を過ごしてきた者にとって慰労であり希望」という隣人住民のメッセージと「齢70という一生のうちで、これほど胸が高鳴った日があっただろうか。私の生涯にこのような瞬間が来るなんて、感謝して勇気に拍手を差し上げる」とする年配の人から手紙も置かれた。
地域で商売をする人は受賞のニュースに喜びながらも、韓江氏に対する目撃談を話すことには慎重な雰囲気だった。韓江氏の自宅付近にある食堂の社長は「うちの料理は消化がいいと言って、朝夕一日二食も食べていったことがある」とし「(行き来する通行人に自分が誰か分かるのではないかと思って)窓際には絶対に座らなかった」と述べた。近くのあるカフェの社長は「平日によく来たが、それ以上はノーコメント」とした。
鍾路を中心に活動した詩人・尹東柱や李箱らの足跡が残された場所にもあわせて活気が戻ってきた。西村の韓屋村(ハノクマウル)には詩人の尹東柱の下宿先跡地や李箱の生家跡地、画家の朴魯壽(パク・ノス)の美術館などが位置している。仁王山(イヌァンサン)の登山を終えて降りてきたAさん(30代)は楼上洞(ヌサンドン)の尹東柱の下宿先跡の前に少しの間立ち、小学生の子女に尹東柱を紹介すると、韓江氏の本屋に足を向けた。鍾路区住民自治委員会のユ・ジェヨン委員長は「文学・芸術界の巨匠を輩出した鍾路が韓江氏の受賞おかげで文化中心地としてももう一度飛躍できるようになりうれしい」とした。
鍾路区庁は通仁(トンイン)市場前に「630年鍾路の自慢 韓江作家のノーベル文学賞受賞をお祝い申し上げます」という横断幕を掲げた。鍾路文化財団関係者は「韓江氏の受賞を記念して区庁と関連行事の推進を検討している」と明らかにした。