「打者は内角のボールを狙い、 投手は外角で勝負しなければいけません」など気の抜けたような公正・中立に慣れた目と耳には「味方」の中継は新鮮であり、また興味を引くのは事実だ。 とはいえ、心の隅に何か引っかかるのは、こうした偏向性に対する熱狂が疎通不在社会の後遺症であり、その症状をさらに悪化させる病原菌ではないかという考えが離れないからだ。

自分と似た群れの中で安らぎを感じるのが人間の本能だ。 それはすなわち、自分と見解や利害が同じ人たちの間で交わる分類主義につながる。 自分が属する集団の利害が他の集団の利害よりも重視されるべきだという社会的本能が生じる。 それはまた別の集団とその構成員に対する軽蔑につながってしまう。 人間の本性がこうであるなら、それが自分が望むものだけを見聞きして消費する１対１の「スマート世界」と会ったのだから、またどんな怪物をつくりだすのかと心配になる。

ルビンの盃で灰色は存在しない。 黒と白のうちどちらか一つを選択しなければならない。 しかしどちらを選択しようと、別の一方があるからこそ絵になるのだ。 白黒をともに見てこそ盃であれ、人の顔であれ、見ることができるということだ。 そしてそれをいつでも変えて見られることが人間の理性だ。 すべて自分たちの側だけを見るのなら、相手なしに野球の試合をするのと変わらないのではないだろうか。 そのような愚かさを避けるためにも、心の片隅にルビンの盃を一つ置いてみてはどうか。

李勲範（イ・フンボム）ｊエディター


【噴水台】一方だけを応援する野球中継、あなたも熱狂しますか？（傂）