平壌（ピョンヤン）ではいま張成沢（チャン・ソンテク）の痕跡を消している最中だ。朝鮮中央テレビや労働新聞のどこにも「張成沢」という名前や死刑執行と関連した話はない。

代わりに２１日付労働新聞は１面全面に『あの方なくしては生きられない』という歌の楽譜と歌詞をカラーで編集して掲載した。金正恩（キム・ジョンウン）が笑う肖像を中央に載せまるで日本帝国主義の象徴である旭日旗を連想させる後光が四方に広がるデザインも入れた。

新曲だが１日で平壌最高の人気曲に浮上した。「親しいあの方の声が胸に流れ…」と始まる歌は、「私たちの運命金正恩同志、あの方がいなければ私たちは生きられない」というリフレーンで終わる。パティ・キムが歌った『あなたなしでは生きられない』の「あなたなしでは生きられない、私１人では生きられない」という歌詞を思い出させる歌の楽譜には「切々と歌う」という注文がつけられている。

労働新聞は２２日付１面ではこの歌に対する反応を載せた。歌が「敬愛する元帥様（金正恩のこと）を天のように信じ生きる千万君民の心情の噴出」と主張しながらだ。

この新聞によると、万寿台（マンスデ）芸術団のチョ・イルリョンは「歌詞も傑作だが限りない魅惑と信頼、これ以上ない歓喜と明るい未来に対する信心がぎっしり詰まった旋律も名旋律だ」と称賛した。

高官らが先を争って称賛する雰囲気で住民たちも協同農場と工場、企業所などで歌を身につけるのに必死だという。

世界北朝鮮研究センターのアン・チャンイル所長は、「張成沢処刑で衝撃に包まれた住民たちにお堅い講演よりも歌で忠誠と結束を誘導しようとする金正恩式の“歌謡政治”」と話す。一方、平壌では冬季のオフシーズンだが先週末に多様なスポーツ競技が開かれた。

２２日に平壌の金日成（キムイルソン）競技場ではフェップルチームと竜岳山（ヨンアクサン）チームによる男子サッカーの試合が開催された。また、金正日（キム・ジョンイル）２周忌追慕大会が開かれた平壌体育館ではレスリングの試合が行われた。２９日にはここで女子ボクシングの試合が開かれる。

朝鮮中央通信は２１日、内閣体育省関係者の話として、「週末ごとにスポーツ競技を組織・進行するのを定例化するだろう」と明らかにした。北朝鮮は２０日に同国を訪問した元米プロバスケットボール選手のデニス・ロッドマンが北朝鮮の選手を指導する様子も国営メディアを通じ報じた。北朝鮮の時ならぬスポーツブームも張成沢処刑と関連しているという分析がある。住民たちをスポーツに没入させることによりすさんだ雰囲気を和らげようとするものという話だ。


北朝鮮、金正恩の“紅葉神話”を大々的に宣伝（２）