「歩いても歩いても」公開控えて来韓した是枝裕和監督(2)
◆ソン・ガンホの再発見=町内の医者として一生働いた映画の中の父はこの作品の笑い誘発因子だ。「私が一生働いて建てた家なのにどうしておばあさんの家だと言うのか」と反抗(?)する部分は、無愛想だった印象を一挙に崩す。「日本で昨年公開したときも観客たちは父が登場すると大笑いしていました。忘れられた家長の威厳をなんとか守ろうとする姿がおかしくもあり労しくもあったようです」
家族は血は通じるがひとまず成長して我が行く道を行けば、それこそ「同床異夢」の集団になるほかないという点も彼は背負っていく。映画の最後で良多の家族がバスに乗って去る場面は意味深長だ。父親は母親に「今度はお正月だね」と言う。しかしバスに乗った息子は妻に「今回来たからお正月はもういいね」「次の来たときは泊まらないで帰ろう」と言う。「私が思う、この映画でいちばん残酷な場面です。息子に無神経なように見えた父は、実際は息子の訪問を待っているのですが、息子は全く違うことを言うからです」