１年で６０００万件の嘆願があふれ、訴える者が斧などを手にして抗議するほどなら悪い制度だ。それで保健福祉部が専門家たちで健保料賦課体系の改善企画団を作って１年半準備した。７５０万の地域加入世帯の８０％である６００万世帯の保険料が減って４５万人の高所得者が保険料をより多く出すという改善案は、絶望を希望に変える救世主であった。ところが発表前日にこれという説明もなく白紙化された。

福祉部長官は「準備不足」を理由に挙げ、青瓦台（チョンワデ、大統領府）報道官は「長官が処理したこと」だと言ったが事実ではない。粗雑に進めた年末精算変更の後遺症で支持率が下がると青瓦台が事に先立ちおじけづいて長官を引き止めたというのが真実だ。よっぽどでなければ企画団長が「政府は改編の意志がない」と非難して辞任しただろうか。青瓦台は誤認した。世論は圧倒的に改編を支持し、政府は今年中に改善案を出すと言葉を変えた。国民の絶叫を冷遇した不通と無所信、嘘について責任を負う人もない。

公務員年金の改革ももたついている。民間企業出身の人事革新処長は、公務員を１０年もやれば年金を払うことを政府案として取り上げた。今は２０年以上やってこそ年金がもらえる。「公務員の手先」だという非難を受けても仕方がない。国家財政の破綻を防ぐために大統領が直接改革を促しているが、このような奇怪な案が出てきた。内部の疎通も間抜けな状態になったのか。

今こそ朴槿恵スタイルを取り出す時になった。私は青瓦台の外にいた時期に朴槿恵の厳しい現実認識と情熱を覚えている。朴槿恵は高度成長期である父・朴正煕（パク・チョンヒ）時代とは違うパラダイムが必要だといった。父の時代には成長が雇用につながったが今は変わったので成長率ではなく雇用率で経済を管理すると予告した。国民幸福のために、ゆりかごから墓場まで生涯周期別のオーダーメード型福祉をすると約束した。朴大統領は今でも「福祉は未来のための大切な投資」として一貫性を守っている。朴槿恵パラダイムは依然として有効だ。

目の前の支持率は忘れ、初心を生かして勝負の賭けに出なければならない。オバマが「私は２回の大統領選挙で勝った」と言ったが、朴槿恵も不利な大統領選挙で勝利した。何が怖いのか。「私はこれ以上出馬する選挙がない」という決起と、現実と向かい合おうとする意思疎通の努力が、朴大統領にも必要だ。

イ・ハキョン論説主幹


【コラム】朴槿恵、これ以上出馬する選挙はない（１）