映画『ニュー・シネマ・パラダイス』(原題「Nuovo Cinema Paradiso)には鐘を持っている神父が登場する。神父が鐘をつくと映写技師のアルフレードは画面を切り取る。街の人々がわいせつな場面を見れなくする検閲だ。キスや抱擁は許されない。映画にはまった住民は決定的な場面が消える度、惜しむ嘆息と揶揄(やゆ)を送る。この映画のハイライトは、映写室で幼いころを送った主人公トトが映画監督として成功した後、帰ってくるシーンだ。トトは、アルフレードのお葬式に出席するため街を訪れる。涙ぐむトトの目の前に、映画から切り取られ山ほど積まれていたキスシーンが、美しいフィルムとなって回っていく。