【コラム】ある中年公務員が人生をあきらめる時=韓国(1)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2013.12.27 14:45
私たちが確かに知っているのは、ただ現在だけだ。訪れていない未来はもちろんのこと、すぐに行き過ぎてしまう過去さえも正確に組み立てるのは難しい。間違いなく覚えているはずの過去が、世間に背を向けた気持ちならばより一層そうだ。最近、自ら人生をあきらめた公務員の心理状態が法廷に提出された。裁判所はその結果を、遺族補償金支給判決の根拠と認めた。「心理的解剖検査」を受け入れたのだ。法廷で初めて表れた韓国の中年会社員の心象、私たちは決して愉快なものではない現実と向かい合わなければならない。
ヒラからスタートして主査(6級)まで昇進した釜山(プサン)の地方公務員、1965年生まれ。彼を65氏と呼ぼう。65氏は酒をほとんど飲まず、家族にはいつも細やかな人だった。心理解剖検査の結果、家族関係は円満だったし大きな持病もなかった。「思いやりが強かった」「つらくても、そんなそぶりを見せなかった」「責任感が強かった」という周囲の証言も出てきた。内省的で誠実な男性、平均的な中高年の会社員の姿だった。