人工呼吸器の除去を許した最高裁判決に基づき、植物状態の患者キムさん(77)に国内で初めての尊厳死措置が施行され、社会的な波紋が広がっている。数時間以内に死亡すると考えていた医療スタッフの当初の予想とは違い、キムさんが自発呼吸をしながら生命を維持していることを受け、相反する反応が出てきている。家族は呼吸器を外してからむしろ患者の顔色が良くなったとし、苦痛を与えるばかりの延命治療は中断されなければならないという事実が立証されたと話している。一方、延命治療の中断に否定的だった延世(ヨンセ)大セブランス病院側は、キムさんが「死亡段階」にあるという最高裁の判断が誤っていたと主張している。宗教界の一部でもキムさんに対する措置が性急だったとし、尊厳死の不正乱用を警戒すべきだという声が高まっている。先月の最高裁判決で一歩進んだ韓国社会の尊厳死関連議論が、もう一度原点に戻るような雰囲気だ。
私たちは、品位ある死に対する国民の高い関心の中、苦労して一歩を踏み出した尊厳死推進作業が今回の事態でうやむやになってはならないと考える。むしろ各種の問題点を補完し、社会構成員が合意できる法的・制度的装置を急いで整備する契機にするべきだ。いつまでも論争で先に延ばし、患者や家族の苦痛、医療現場の混乱を放置することはできないからだ。