米国とロシアが最近、戦略兵器削減交渉を再開することで合意したことから、世界の核兵器廃棄に対する希望がよみがえった。わずか数年前には核廃棄は夢にすぎなかった。しかし平和主義者だけでなく、政治家と学者も最近は核廃棄を主張する声を高めている。
冷戦時代には戦争抑止の手段として核兵器の必要性が正当化された。相互確証破壊(MAD)体制下で一度ことが起きればすべてが死ぬという「恐怖の均衡」の上に安保が確立された。その当時二極化した世界で核兵器保有国は5カ国だけだった。これらはすべて国連安全保障理事会の常任理事国だ。ところで今日では構図が変わった。ワルシャワ条約機構は解体され、ソ連も崩壊した。二極化した世界と東西間の分裂は消え去った。しかし相互抑止という危険な論理に基づいた秩序は協力と相互依存による新たなシステムに交代されなかった。