サムスン電子が人間の脳を模倣した人工知能（ＡＩ）半導体核心技術のニューラルネットワークプロセッシングユニット（ＮＰＵ）をＤＲＡＭのように主力事業として育てる。

ＮＰＵは自ら学習するディープラーニング（深層学習）機能を備え、「ＡＩの頭脳」と呼ばれる。システム半導体分野の核心技術だ。サムスン電子はＮＰＵ技術開発を通じて４月に李在鎔（イ・ジェヨン）副会長が宣言した「半導体ビジョン２０３０」の達成を加速化する方針だ。

サムスン電子は１３３兆ウォンを投資するシステム半導体育成計画の「半導体ビジョン２０３０」を達成するためＮＰＵ事業に積極的に取り組むことにしたと１８日に発表した。次世代ＮＰＵ技術開発に向け２００人水準である研究開発人材を２０３０年までに２０００人規模と１０倍以上に拡大することにした。現在「ギャラクシーＳ１０」など戦略スマートフォンに使われるＮＰＵの活用度を、自動車電装製品、データセンター、モノのインターネット（ＩｏＴ）などに拡大する計画だ。

サムスン電子はＮＰＵが搭載されたＡＩ半導体市場が毎年５２％ずつ成長し、昨年の４３億ドルから２０２３年には３４３億ドルまで拡大すると予想した。

サムスン電子システムＬＳＩ事業部長のカン・インヨプ社長は「独自の成長だけではシステム半導体分野で世界１位になるのは難しい。必要なら大規模買収合併も推進するだろう」と話した。

◇「ハイ、ビクスビー」

机の上に数十台のスマートフォンが置かれているが反応するスマートフォンは１台だけだった。残りのスマートフォンは持ち主の声ではないことを認識して反応しなかった。複数の人が一緒に写真を撮る時は持ち主の顔を素早く区分する。持ち主が話す言葉をすぐに認識し分かち書きと正書法も間違わず正確にテキストとして打ち出す。

サムスン電子のスマートフォンはＡＩアシスタント「Ｂｉｘｂｙ（ビクスビー）」を通じてこうしたＡＩサービスを提供している。簡単に見えるがクラウドサーバーにアクセスしなくてもスマートフォンが独自に複雑な演算作業をしなければならない。サムスン電子のアプリケーションプロセッサ（ＡＰ）には独自開発したＮＰＵが内蔵されているために可能なことだ。人間の脳神経網と似たＮＰＵはディープラーニングアルゴリズムに最適化された半導体だ。ＮＰＵの性能を高めることでサムスン電子は各種ＡＩサービスを発展させることも可能になる。

◇「ＮＰＵ時代」が来る

サムスン電子システムＬＳＩ事業部長のカン・インヨプは１８日に開かれたＮＰＵ事業説明会で、「ＮＰＵ技術を集中育成し２０３０年までにシステム半導体世界１位の目標を達成する」と発表した。グーグル、エヌビディア、クアルコム、ファーウェイなども独自にＮＰＵを開発しているがまだ主導権を握った企業はない。ＮＰＵ市場を先取りする企業がＡＩ時代の主導権を握ることになる。中央処理装置（ＣＰＵ）、グラフィック処理装置（ＧＰＵ）時代を過ぎ「ＮＰＵ時代」が来ているのだ。

サムスン電子は自社に強みがあるモバイル分野に集中して成果を出している。２０１６年からＮＰＵ開発に入り、昨年はモバイルＡＰ内に独自ＮＰＵを搭載した「エクシノス９」を発表した。クラウドサーバーとデータをやりとりして行っていた複雑なＡＩ演算作業をモバイル機器が独自に行えるようになった。サムスン総合技術院のファン・ソンウ副院長（副社長）は「モバイル部門では第２世代ＮＰＵ開発を終わらせており、第３世代ＮＰＵを開発中」と説明した。

モバイル部門だけでなく、自動車の電装、データセンター、モノのインターネット（ＩｏＴ）などＩＴの全分野で開発を拡大する計画だ。自動運転車時代が本格化すれば車両インフォテインメントシステム（ＩＶＩ）から先端ドライバーアシストシステム（ＡＤＡＳ）まで適用範囲は無尽蔵だ。ＮＰＵを活用すれば車線と歩行者、他の車などを正確に認識し区分できるようになる。

◇「年平均５２％の高速成長」

サムスン電子システムＬＳＩ事業部ＳｏＣ（システムオンチップ）開発室長のチャン・ドクヒョン副社長はこの日、「ＮＰＵが搭載されたＳｏＣ市場は２０２３年まで年平均５２％成長するだろう。サムスンで開発したすべてのＳｏＣにはＮＰＵが内蔵される予定」と紹介した。長期的にはＮＰＵ技術を発展させ人の頭脳水準の情報処理と認識を可能にする「ニューロモーフィックプロセッサ技術」まで進むという目標を立てた。ＮＰＵは１秒当たり数十兆回の演算ができるが、ニューロモーフィックプロセッサはこれより１００倍多い数千兆回の演算が可能だ。

サムスン電子はこうした目標を現実化するためにグローバル研究機関と大学との協力を拡大する計画だ。人材発掘にも積極的に投資する予定だ。現在２００人ほどであるＮＰＵ分野の研究人材を２０３０年までに２０００人規模に１０倍以上拡大することにした。人材の割合はハードウェアが３０％、ソフトウェアが７０％だ。５月には総合技術院モントリオールＡＩラボをディープラーニング専門研究機関であるカナダのモントリオール学習アルゴリズム研究所（ＭＩＬＡ）に拡張移転した。