最近、ビッグデータが「産業の米」という言葉を知らない人はいない。ビッグデータがなければ企業は顧客がどこにいるのか、何を望むのかを把握できない時代になっている。世界経済を主導する先端情報技術企業もビッグデータを自社のビジネス基盤にして久しい。伝統の製造業を抑えてグローバル時価総額の上位圏を掌握した「ＦＡＮＧ４兄弟（フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグル）が２１世紀のデジタル経済を主導する原動力もビッグデータ技術だ。これら企業は顧客が何を望むか、どの製品がよく売れるかをリアルタイムで把握し、顧客に最上の製品とサービスを提供する。ビッグデータが産業の米と呼ばれる理由だ。

米国だけではない。製造業で先進国を模倣していた中国が、第４次産業革命で韓国はもちろん西側先進国を脅かす存在になったのも、ビッグデータの活用を最大化したからだ。時価総額基準でサムスン電子より企業価値が高まったアリババやテンセントが創業から２０年ほどで世界的な技術企業になったのも、ビッグデータを活用した製品開発とマーケティング、顧客個人向けサービスのためというのは広く知られている事実だ。

ところが今の韓国は「ビッグデータガラパゴス」に転落している。過度な個人情報保護規制に阻まれて世界の流れに逆行した結果だ。これは韓国の産業発展に深刻な動脈硬化を起こしている。ビッグデータを円滑に使えず、国内企業がモバイル商取引はもちろん、人工知能（ＡＩ）、モノのインターネット（ＩｏＴ）、スマート工場、先端移動通信（５Ｇ）など超高速プラットホーム経済時代についていけなくなったからだ。さらに農業・医療・福祉分野でも政府と企業が情報を把握できず、効率的な対処が不可能になっている。ビッグデータの活用なく第４次産業革命は一歩も進めないということだ。

今からでも公論化を通じて問題を解決しなければいけない。最大の障害物と見なされる世界最高水準の個人情報保護が問題なら、原因を解消すればよい。その原因は大きく２つ挙げられる。まず、過度な個人情報を収集する韓国的な慣行だ。ＦＡＮＧはもちろん中国企業も簡単な情報さえ入力すれば会員として加入できるが、韓国では住民登録番号を含む個人の重要情報を収集する。また、このように収集された情報が企業の故意・不注意で大量流出した事故も問題だった。韓国では個人の情報が当事者も知らないうちに流通し、悪用される余地が大きいのが現実だ。

とはいえ時代に遅れることはできない。先進国のように個人識別情報は収集段階から最小化し、不正乱用の余地を減らそう。このような土台の上で匿名情報はその活用度を高めよう。そうしてこそ最小限のトレンドさえも把握できず製品開発に困難が生じる産業はもちろん、減資材の確保、科学・医療実験まで阻まれるビッグデータ後進国から抜け出すことができる。政府・国会・財界・専門家が共に新しいデータ活用解決法の共感を見いだす必要がある。第４次産業革命時代にこれよりも急がれることがあるだろうか。