【コラム】米朝首脳会談場を徘徊する3つの幽霊(1)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2019.02.12 13:48
過去の3つの幽霊がよみがえった。トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長のベトナム・ハノイ米朝首脳会談場をうろつく幽霊だ。まずは現実主義。20世紀に存在した米国の外交原則の復活だ。米国の対外政策にはいつも「善きサマリア人の道徳的義務」というラベルがついていた。しかしホワイトハウス内の「決断の机(Resolute desk)」(歴代大統領が使用してきた机)」に置かれた戦略のターゲットはその言葉とは違った。一つの大国のユーラシア大陸支配を阻止する「勢力均衡」だった。米国の国益に敵対的な膨張を図る大国とは、ロシア以前のソ連とドイツ、日本だった。ジョージ・F・ケナン元駐ソ連大使は現実主義を簡明に要約した。「民主国家3強のうちの一つの支援もなく退けられる国は日本だけだった。ドイツとソ連が力を合わせれば決して退けることはできない。この二つのうち一つと正面対立する場合、もう一つの国の協力を得てこそ撃退が可能だった」(『米国外交50年』)。最も進歩的なフランクリン・ルーズベルト米大統領さえもナチスドイツと戦おうと「虐殺者」スターリンと手を握った理由だった。
66年前の韓半島(朝鮮半島)の停戦も現実主義の産物だった。米国とソ連はともに38度線を越える第3次世界大戦を望まなかった。第2次世界大戦後、欧州の一つの軸のドイツが崩れ、東側半分がソ連の赤に染まってきた。焦りを感じた英国までが大陸の東端の休戦を促すしかなかった。停戦した韓半島は金正恩委員長の大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発に米国が目を向けるまで「冷戦時代の微々たる遺物」として記憶の中に閉じ込められていた。