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国家への恨みが“国宝テロ”へ…計画的犯行だった

2008.02.13 09:04
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12日午前、南大門警察署に移送されたチェ容疑者



すべてを国家のせいにする反社会的な人格障害

 
護送車から降りた犯人は平凡な老人だった。カメラのフラッシュが瞬くとすぐに顔を下へ向けた。帽子とマスクで顔を隠したチェ容疑者は、記者の質問攻勢に口を閉ざした。ただ、か細く震えた声で「国民に申し訳なく、家族らにすまない」という言葉を残しただけだった。

しかしチェ容疑者の心には国家と社会に対する盲目的な憎悪が燃えていた。その憎悪が610年という時を見守ってきた大韓民国の文化的シンボルの崇礼門を灰にした。

12日、ソウル地方警察庁は「崇礼門放火事件のチェ・ジョンギ容疑者は、犯行に関するすべてを自白した」と発表し「13日に逮捕令状を申請する」と明らかにした。警察は前日の11日、江華島(カンファド)の前夫人宅でチェ容疑者の身柄を確保した。犯行に使用したシンナーの缶と革の手袋も押収した。

チェ容疑者は警察で10日午後8時45分に崇礼門2階の楼閣に上ってシンナーをまき、使い捨てライターで火を付けたと自白した。チェ容疑者は2006年4月、昌慶宮の文政殿を放火した疑いで有罪宣告を受けており、現在は執行猶予中だった。

犯行動機はあきれたものだった。「この悔しさを世の中に広く伝えるためにやった」というものだ。警察が確保した自筆の手紙には世の中に対する恨みでぎっしりつまっていた。土地への補償金額を上げようとしない建設会社、自分の訴えと陳情を受け入れない高陽市(コヤンシ)と青瓦台(チョンワデ、大統領府)、不利な判決だけを下した裁判所など、全てが恨みの対象だった。

警察の尋問の途中でチェ容疑者は「国に報復するために列車を転覆させることも考えたが、あきらめた」と話して捜査官を驚かせた。犯行に先立ち崇礼門を2度も事前に訪れるという緻密さも見せた。

犯罪心理学者は、チェ容疑者が「反社会的人格障害」を体験していると分析する。「個人の誤ちをすべて国家と社会のせいにする極端な自己合理化」(表蒼園警察大学教授・犯罪心理)が表れているためだ。

国家と社会に対する怒りはたびたび有形、無形の暴力につながる。李水晶(イ・スジョン)京畿(キョンギ)大学教授(犯罪心理学)は「被害妄想に苦しめられたチェ容疑者が陳情を行ったのは本人の正当性を広く伝える機会と通路」だったとし「その機会と通路が反国家、反社会的な崇礼門放火に現れた」と話した。

チェ容疑者をはじめとするこのようなの憎悪心はたびたび大きな事件の火種となった。2003年2月、200人あまりの死傷者を出した大邱(テグ)地下鉄事件がその例だ。持病と貧しさから社会に対する憎しみを抱えていた放火犯キム・デハン(2004年死亡)受刑者は「一人では死ねない」との思いから乗客であふれる地下鉄に火を付けた。

犯人は逮捕された。しかしほかの事件と違い、国民の胸の中のしこりは解けなかった。目の前でたった5時間のあいだに消えた‘国宝1号’に対する無念さと第2、3のチェ容疑者が現れるかもしれないという危惧が共に去来しているからだ。

◇反社会的人格障害(Antisocial personality disorder)=自分の不幸な境遇を社会のせいにする思考をもった人。非道徳的あるいは反社会的な行動で他人に危害を加える。善と悪を判別し、自分の行動がもたらす結果についてきちんと理解している。そのため法的処罰が免除される精神疾患ではない

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