韓国ソウル交通公社がソウル地下鉄の案内放送に人工知能（AI）技術を導入する計画を立てていることが明らかになると、声優団体が激しく反発している。



韓国声優協会は2日、韓国放送演技者労働組合、韓国放送実演者権利協会と共同で声明を発表し、「ソウル交通公社が当事者の同意なしに声優カン・ヒソン氏の声をAIに学習させて活用し、代替しようとする計画を発表した」とし「著作権法上の違法行為であり、倫理的にも非難されるべき行為」と強く批判した。

カン・ヒソン氏は、29年間にわたりソウル地下鉄の駅内案内放送を担当してきた声の主人公で、アニメ『クレヨンしんちゃん』韓国版では野原しんのすけの母・野原みさえ役を演じ、人々から親しまれている人物だ。最近がん治療のため声優活動を一時中断している状況で今回の計画が浮上したため、論争は一層大きくなった。

声優協会は「30年近く地下鉄案内放送を担当してきた声優の声を本人の同意なくAI学習に使用しようとした事実は深刻な問題だ」とし「闘病中の声優に取り返しのつかない精神的被害を与えたことに対し、責任を持って公式謝罪文を発表すべき」と求めた。

さらに協会は「ソウル交通公社が今後、人間の声優の声を生成型AI技術で再現しようとする場合、必ず本人の明示的同意を得るべきだ」と指摘して「このような手続きが守られなければ、違法で非倫理的な慣行として定着しかねない」と懸念を示した。

◇ソウル交通公社「声優の同意なくAI TTSの導入は検討していない」

これに対し、ソウル交通公社は、案内放送を「人工知能音声合成（AI TTS）」方式に切り替えることに関して、特定の声優の声を学習させることを検討した事実はないと説明した。

公社はこの日、説明資料で「公社は既存の案内放送を録音した声優の同意なしに、その声をAI TTSに導入する案を検討した事実はない」と明らかにした。

また、公社は「既存の声優との録音が行えない場合に備え、複数の検討事項の一つとしてAI TTS導入を検討したものであり、決まった事項ではない」と説明した。