ウクライナ戦争終戦交渉の重要なカードであるクルスクの占領と奪還をめぐり、ロシアとウクライナの間で神経戦が加熱している。ウクライナ軍は昨年８月に奇襲的にロシア西部のクルスクを攻撃し、一時は１３００平方キロメートル以上の土地を掌握した。だが最近ロシア軍の反撃によりウクライナ軍は押し出されているところだ。「３０日停戦案」の合意を控え互いに交渉に有利な立場を得ようとする神経戦という見方が出ている。

ウクライナ軍のシルスキー総司令官は１２日、フェイスブックに「クルスクにいるウクライナ軍を包囲しようとするロシア軍の試みは成功できなかった。包囲されるリスクがなく有利な防衛ラインに移動するための措置を適時にしている」と投稿した。前日に「クルスク地域の１２の集落と１００平方キロメートルの領土を奪還した」というロシア国防省の声明に反論したものだ。言及された１２の集落はウクライナが占領しているクルスクの主要都市スジャを囲んでいる。現在ロシア軍は周辺地域をまず占領した後、クルスク内のウクライナ軍を孤立させる作戦を展開している。

ロシアはこの日もクルスク戦線での優位確保に余念がなかった。リアノーボスチ通信によると、ロシア軍のゲラシモフ総参謀長はこの日、戦争勃発後に初めてクルスクを訪問したロシアのプーチン大統領に「１日でスジャをはじめとして５つの集落を、５日間で２４の集落と領土２５９平方キロメートルを解放させた」と報告した。彼はまた「敵軍が最初に占領した領土の８６％以上である１１００平方キロメートルを取り返した」とした。スジャはクルスクの中心部で、欧州に向かうガスパイプラインの要衝地であり、ウクライナ軍の物資供給拠点だ。タス通信はこの日、ロシア兵らがスジャの広場で国旗と部隊旗を揚げている姿の動画も公開した。ただ動画が事実かどうかは確認されていない。

これに対しウクライナ軍はスジャの状況と関連して公式的な立場を出してはいない。ただシルスキー総司令官は１３日、テレグラムで「スジャと周辺地域で猛烈な戦闘が続いている。クルスク防衛を維持するが、必要に応じて部隊をさらに有利な位置に機動できる」と明らかにした。一言でウクライナ軍退却の可能性を示唆したのだ。

もしロシアの主張通りにスジャまで奪還されるならば、ウクライナは終戦交渉で使う「領土交換」のカードを失うことになる。ロシア軍に領土の約５分の１を占領されたウクライナはクルスクの占領地を領土交換交渉のカードとして使う計画だった。