◇サムスン「招聘人材の墓場」の汚名

そうそうたるビッグテック出身者を華麗に迎え入れるが、３～４年以上勤める人は珍しい。この４～５年間サムスン電子で繰り返されたこのパターンは同社に「招聘人材の墓場」という汚名を残している。

中央日報はこの５年以内にサムスン電子を離れた外部出身研究開発役員級８人と接触した。彼らはほとんどが言葉を控えながらも「信じて待ってくれない文化」と「個別の事業部を超えた全社的意志決定の不在」などを問題と指摘した。外部招聘人材に対する社内の牽制が激しいが、これを超える権限を与えることも保護することもないため、我慢を続けたがあきらめることにしたということだ。ある元役員は「サムスンは技術をとても強調するが、実際には技術のほかに考えるべきことがあまりにも多い会社」と話す。

２０２０年代初めにサムスンで勤務した別の元役員は「金を儲ける事業部と先行研究をする部署間の対立はどの技術会社にもあるが、サムスンの問題は最終意志決定と推進の速度」と話した。外部人材に与えられた時間が長くない上に、投資・決定の速度が遅いため、「ここに居続けたところでできることはない」という結論から会社を去ることになるということだ。

研究開発職にも労働硬直性が激しい韓国の産業界全般の問題も指摘される。シリコンバレーは「常時解雇」の可能性と「破格な報賞」が共存するが、韓国は安定的だが能力に基づく差等待遇をすれば内部の反発が激しい。世界的な最高級人材が「あえて韓国企業サムスン」に残る理由が不足する背景だ。

問題はこうしたことが繰り返され「Ｓ級人材」の招聘がますます難しくなっていることだ。サムスン電子のＡＩ指揮官に当たるサムスンリサーチ長は２０２３年にプリンストン大学の承現峻（スン・ヒョンジュン）教授の退任後新たな人物を求められずにいる。承教授は２０１８年にサムスンから「最高科学者」として招聘され、２０２０年からサムスンリサーチ長を務めたが、２０２３年初めに「グローバル研究開発協力担当」に役割が縮小され、同年末に退任した。現在は通信技術専門家である田敬薫（チョン・ギョンフン）ＤＸ部門最高技術責任者（社長）が兼務している。

◇「異種結合」時代に「純血」ロマンはできず

ＡＩ激戦期に世界のテック企業は破格な「混種」政策を展開している。マイクロソフトは２０２２年に独自開発したＡＩモデルを差し置いてスタートアップであるオープンＡＩのチャットＧＰＴを主力製品に選びＡＩ競争の主導権を先取りし、グーグルは買収した英ディープマインド創業者のデミス・ハサビス氏に２０２３年から自社のＡＩ研究組織をまるごと任せた。メタはディープマインドやオープンＡＩにエンジニアに白紙小切手クラスの破格の報賞を掲げて市場の構図を揺さぶっている。サムスンはＬＧ半導体出身の全永鉉（チョン・ヨンヒョン）副会長がＤＳ部門長を務め、クアルコム出身のチェ・ウォンジュンＭＸ開発室長が最近社長に昇進するなど変化の兆しがあるが、まだ遅れていると評価される。

丁重に迎え入れたのに…サムスンのＡＩ・ロボット指揮する人材相次ぎ去る（１）