ここに韓流に関する全てを盛り込んだ百科事典がある。韓流が気になるなら人工知能（ＡＩ）のチャットＧＰＴやディープシークではなく、韓国国立民俗博物館が昨年末に出した『韓流文化事典』（全２巻）を勧めたい。韓国の衣食住から人気のＫ－ＰＯＰ、ドラマ、映画、ウェブ漫画などを表題語４５３件、写真８００枚余り、原稿用紙４６００枚分の文章で解説した。外国人諮問委員を含め専門家１２９人が参加した初の韓流専門百科事典だ。外国人だけでなく韓国人でもよく知らなかった風習や由来を確認できる。

編さんを陣頭指揮した民俗博物館のペク・ミニョン専門委員は「コロナ禍後に海外から事典検索アクセスが大きく増えた。民俗博物館がなぜ韓流事典を出すのかと思うかも知れないが、韓流コンテンツの中の韓国の日常はそのまま２１世紀の韓国民俗だ」と話した。大学で民俗学を専攻しソウル歴史博物館を経たペク委員は２０１１年に民俗博物館に事典担当として配属された。考古学、歴史学、人類学など多様な専攻を持った事典チーム６人を率いている。

実物の事典は公共機関用に限定配布されるが、ウェブでＰＤＦ版を無料でダウンロードできる。５月からはウェブ検索サービスにも反映され、表題語を入力すれば項目が表示される。年内に英語版に続き中国語版とスペイン語版も出る。２０１０年に導入され２０１６年から本格化した韓国民俗大百科事典ウェブ検索サービスは２０２２年から年３００万アクセスを超えた。

韓流文化事典は、同じ表題語でも既存の風俗事典と違い、大衆文化と緊密な関連の中で解説する。例えば「トッケビ（おばけ）」の場合、既存の事典は説話や巫俗信仰として説明する。これに対し韓流文化事典はファンタジーロマンスドラマの『トッケビ』（２０１６年）を別に扱う。ドラマに登場する死神や謎の老婆のような存在を怨霊や転生と結びつけて韓国文化の根っこを紹介する形だ。

ペク委員は「映画『パラサイト』（２０１９年）と関連し、半地下住宅とチャパグリなどに言及し、別途の表題語を通じてこれらが現代韓国人の住・食生活でどのような意味があるのか説明する。次々と現代と民俗が出会うが、全表題語のうち３０％が大衆文化素材」と紹介した。

表題語選定は博物館の事典編さんチームだけでなく、人気料理番組に出演したイタリア人シェフなど専門家の意見を幅広く反映した。４５３の表題語のうち半分ほどが食べ物関連の言葉だ。料理のほかに「ごはんを食べよう」の意味や、「モッパン」のような新造語も紹介する。「外国人は焼き網やキッチンばさみなどの料理道具の背景や、味や食感の表現や情緒にも関心が多い」という。大衆文化コンテンツは内外での興行と海外受賞、ビルボード　チャートなど客観的指標を基に選定した。

古い文献など史料を土台にする民俗事典と違い、大衆文化は確立された研究成果がなく「事典」として体系化するのが容易でない。ウェブ漫画の発展と関連しても韓国の２大プラットフォームであるネイバーとカカオが「サービスの革新」をめぐり互いに成果を主張したため原稿を何度も検討・修正したという。ペク委員は「今回大衆文化データも蓄積したので今後も細かく専門事典を増やしていく計画。民俗博物館が所蔵した遺物とデジタルアーカイブ約１００万件を活用したウェブ事典ではリアルなイメージと動画資料に会えるものもあるのでたくさんアクセスしてほしい」と呼び掛けた。