【時論】ある共和国の自害行為=韓国
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2024.12.10 13:24
振り返れば数多くの前兆があった。どの政府でも間違いや失敗はつきものだ。重要なのは失敗を少なくしようとする努力、失政が発生した場合にはこれを素直に認めて修正しようとする姿勢だ。だが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府に欠如していたものがまさにこれらのことだった。不認定と不通、そして前政府と野党に対する責任転嫁が続いた。国会で通過させた法案に対して数十回も拒否権を行使し、十分な交渉や妥協を試みることはなかった。尹大統領にとって野党は最悪の犯罪集団であり反国家勢力だった。
2024年12月3日、尹大統領は平凡この上ない真夜中に突然で脈絡もなく非常戒厳を宣言した。非常戒厳の本質は「法」と「制度」を通じて独裁政治を許すことだ。憲政を中断して国民の基本権を剥奪する、共和国の生命を保護するための最後の手段としてのみ使用できる民主主義の「劇薬」だ。平和な共和国の日常を襲撃した戒厳宣言の瞬間は、大統領自身こそ自由と民主主義の最も大きな危険要素だったことを如実に表わす瞬間だった。国家権力が必要な理由はすべての人々の自由と安全を保護するためだ。だが、最も大きな力である国家権力は不正乱用の危険が今なお残る危うい手段だ。そのため憲法というものが作られた。市民一人ひとりの力は微弱であるため、権力を統制できるのは権力しかない。権力を分散させて各機関に任せて、分散した権力間に均衡と牽制(けんせい)を形成させる。このような権力の構造を詳細に決める設計図が憲法だ。政治権力が憲法を侵害することが危険な理由は、憲法が最も上位にある法だからというだけではない。これが崩れれば、われわれ皆の安全や自由が崩れるためであり、安保や外交、そして共和国の運命も風前の灯火のごとく弱いものになるためだ。