パレスチナ武装政派「ハマス」の最高政治指導者ヤヒヤ・シンワル氏の死亡にもかかわらず、イスラエルやハマス、ハマスを支援してきたイランいずれも武力対決を続けると明らかにした。シンワル氏の死を機に停戦を導こうとした米国の期待とは相反する。イスラエルのネタニヤフ首相の自宅が無人機（ドローン）攻撃を受け、ガザ地区とヒズボラに対するイスラエル軍の空爆が続くなど、中東危機が高まっている。



タイムズ・オブ・イスラエルなどによると、１９日午前（現地時間）、イスラエルの海岸都市カエサレアにあるネタニヤフ首相の自宅がレバノンから飛んできたドローンの攻撃を受けた。当時、首相夫妻は自宅にいなかった。イスラエル軍は「レバノンからドローン３機が飛んできたが、２機は迎撃し、１基がカエサレアの建物を打撃した」と明らかにした。

空襲直後、ネタニヤフ首相は「きょう、私と妻を暗殺しようとしたイランの代理勢力は重大なミスを犯した」とし「イランと悪の枢軸パートナーにイスラエル人を傷つけようとする者は大きな代価を払うと警告する」と話した。実際、イスラエル軍は２０日、レバノンの首都ベイルート南部のヒズボラ情報司令部と地下兵器施設を空襲したとＡＦＰ通信が報じた。

イランの最高指導者アリー・ハメネイ師は１９日、声明で「彼（シンワル氏）の死は確かに抵抗の軸にとって苦痛になる」としながらも「彼の死が抵抗の軸を止めることはなく、ハマスは引き続き生き残るだろう」と明らかにした。ハマスのガザ地区の第２人者カリル・アル・ハイヤ氏は前日の放送演説で、「イスラエル軍がガザ地区への攻撃を中止し、パレスチナから撤退し、刑務所に収監されているわが囚人を釈放しない限り、イスラエル人の人質は釈放されないだろう」とし、「シンワル氏の死は（ハマスを）強化することだけに寄与し、占領者は直ちに彼を殺したことを後悔するだろう」と警告した。

シンワル氏の死亡が知らされた後、米国のジョー・バイデン大統領は「政治的解決のための機会」とし、カマラ・ハリス副大統領も「戦争を終わらせる機会が来た」と述べた。アントニー・ブリンケン国務長官は、中東の解決策を探るため、２２日、イスラエルを訪問する予定だ。

イスラエルは、米大統領選挙（１１月５日）前の中東秩序の再編を狙っている。ロイター通信はイスラエルの消息筋の話として「イスラエルは米国の新大統領が就任する前にハマスとヒズボラに最大限被害を与え、取り返しのつかない水準で『緩衝地帯』を設けようとしている」と分析した。

イスラエルは、シンワル氏の死に関連した映像と画像を公開し、世論戦に乗り出した。これは、シンワル氏が最後まで決死抗戦した映像が広がり、彼を英雄視する雰囲気が創られることに伴う措置だ。フィナンシャル・タイムズは１８日、「数カ月間、イスラエルはシンワル氏がガザ地区の安全なトンネルに隠れていると宣伝したが、パレスチナ人は戦闘服姿の彼が片手に負傷したまま、もう一方の手で木片を投げながら最後まで抵抗する姿を映像を通じて目撃した」と伝えた。

その中には４万シェケル（約１６０万円）の現金とメントスキャンディなど、シンワル氏の所持品の写真も入っている。イスラエル側は、指が切られたシンワル氏の遺体の写真を印刷し、ガザ地区南部に散布した。また、シンワル氏の妻の姿が映ったトンネル防犯カメラの映像を提示し、妻が３万２０００ドル（約４７８万円）相当のブランドバッグであるエルメス・バーキンを持って避難したと主張した。