傍らで見たノーベル賞小説家・韓江…句点ひとつも軽々しく打たなかった(1)
ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版2024.10.13 11:31
作家韓江(ハン・ガン)のノーベル文学賞受賞の知らせを聞いた時、私は帰り道の江辺北路にいた。長く続く車の赤いブレーキランプを眠たい目でにらんでいる時だった。好きなラジオが終わった後は聞きたいものがなく長いあくびをしたりもした。その時運転席のダッシュボードに置いておいた携帯電話が続けて鳴り始めた。「韓江」「ノーベル賞」「初めて」などの単語がメッセージのプレビューに表示されては消えた。短く消えた単語だけ見ても悲鳴が上がった。小説家韓江が韓国で初めてノーベル文学賞を取った。この状況を形容する単語が私にはなかった。えっ、あっ、うわぁ、のような感歎詞を順に吐き出して涙を流すだけだった。
いつかは韓国もノーベル文学賞を取る日がくるだろう、という気持ちで毎年ノーベル文学賞を待ったが、そのいつかが今年になるとは思わなかった。当然この瞬間最もうれしい人は作家本人かもしれないが、きょうだけはこの歴史的な喜びを国民みんなが分かち合い享受すれば良いだろう。私もきょうだけはノーベル文学賞受賞作家韓江の代表作『少年が来る』の編集者として満たされるようにこの瞬間を楽しみたい。自慢はしたがらない人だがこの作品だけは出版前から私の自慢で自負だったので喜んで祝杯を上げる気持ちになった。『少年が来る』は私にも非常に格別な作品だ。本立てから『少年が来る』の初版本を持ち出して韓江とともに本を作った時を思い出した。ブログに毎日「少年が来る」という題名の小説を上げた十年前の冬を。