「ビッグテックはＡＩ（人工知能）に莫大なエネルギーが必要で、今後原子力を使わなければならないという共通的な考えを持っていた」

最近、米国出張でＮＶＩＤＩＡ・オープンＡＩ・ＴＳＭＣ・ＭＳ（マイクロソフト）・アマゾン・インテルのようなグローバルＡＩ会社のトップに会ったＳＫの崔泰源（チェ・テウォン）会長が先月、グループの主要経営イベント「利川（イチョン）フォーラム２０２４」でこのように述べた。

ＡＩ産業が大きくなり、電力消費量が大幅に増えると、ビッグテックが原子力投資に乗り出している。必要な電力は急増しているのに、環境問題を考慮すると化石エネルギーだけに頼ることはできないからだ。

ＡＩ開発や運用には多くの電力が必要だ。まず、ＡＩ産業の基盤となるデータセンターを稼動するためには、一般データセンターの６倍水準の電力が必要だ。データセンターは、大規模なデータを保存・処理するサーバー（コンピューター）が数千台以上集まっている施設だ。２４時間稼動し、室内の冷却・湿度調節が重要で、絶えず電気供給が必要なため「電気を食べるカバ」と呼ばれている。

国際エネルギー機関（ＩＥＡ）は世界中のデータセンター、仮想資産・ＡＩ関連の電力消費量が２０２２年４６０テラワット時（ＴＷｈ）から２０２６年には１０５０ＴＷｈまで増えると見ている。ゴールドマンサックスによると、グーグルで検索する際に必要な電力は平均０．３ワット時（Ｗｈ）だが、生成ＡＩのチャットＧＰＴで検索すると１０倍水準の２．９Ｗｈが必要だ。

だからといって石炭のような化石エネルギーに頼ることもできない。アルファベット・アップル・メタ・ＭＳは２０３０年までに「ネットゼロ（カーボンニュートラル、実質炭素排出０の状態）」を達成させると発表したからだ。代案として再生エネルギーと原子力が浮上する中、原子力に対する関心と期待が共に大きい。米ハーバード・ビジネス・スクールのロバート・エクルズ教授は最近、フォーブスへの寄稿文で「再生可能エネルギーは単独では十分ではなく、原子力は脱炭素基底負荷電力を提供し、必要な敷地面積が小さく、発電所の寿命が２倍以上長い」と主張した。

ロバート教授によると、エネルギー源による設備稼働率は原子力が９２％、天然ガス５５％、石炭５４％、水力３７％、風力３７％、太陽光２７％だ。米国原子力協会（ＮＥＩ）は、原子力がより小さい面積でより多くの電力を生産するため、再生可能エネルギーを補完すると評価した。原子力に比べて太陽光は３１倍、風力は１７３倍も大きい面積を占めるということだ。発電所の寿命も原子力は４０～６０年だが、風力は２０年、太陽光は３０年だ。

特に、ビックテックは小型モジュール原子炉（ＳＭＲ）に注目している。電気出力が大型原発（１０００メガワット）より小さい３００メガワット以下で小さいミニ原発だ。必要な電力を得るほどの大きさで製作することができ、空間使用を最小化できる。放射線非常計画区域の半径も大型原発（３０キロ）の１００分の１の３００メートル水準だ。冷却水で水を使わないため運営費用を減らすことができ、建設期間も大型原発（１年）より短い３－４年（１０００メガワット基準）で済む。

ニューズウィーク・ロイターなど海外メディアの報道によると、オープンＡＩはＳＭＲ開発会社オクロに投資し、２０２７年の稼働を目標にＳＭＲ開発を始めた。オープンＡＩのサム・オルトマン最高経営者（ＣＥＯ）がオクロの理事会議長を務めている。昨年、核融合発電スタートアップのヘリオンエネルギーと２０２８年から核融合発電を通じて毎年５０メガワット以上の電力供給を受けることで契約した。アマゾンウェブサービス（ＡＷＳ）は今年３月、ペンシルベニアにあるデータセンターに原子力供給のため６億５０００万ドル（約９２２億円）を投資した。

ＭＳも風力と太陽熱が使えない時に備えて、バージニアにあるデータセンターに原子力を供給する契約を昨年５月に締結した。ＭＳの創業者ビル・ゲイツ氏ははなからＳＭＲ企業のテラパワーを作った。今年５月、米国では４０億ドル規模のＳＭＲ建設工事を初めて開始した。

中国も商業用ＳＭＲ玲竜１号を完工し、２０２６年の商業運転を目標に準備中だ。欧州連合（ＥＵ）は２０３０年のＳＭＲ稼動を目標とし、今年初めに「欧州ＳＭＲ産業同盟」を発足させた。米国ではニュースケールが米国で初めて原子力規制委員会（ＮＲＣ）で設計認証を受け、ウェスティングハウス、カイロスパワーなど多くの企業がＳＭＲの開発を開始した。

韓国は世界で初めて２０１２年にＳＭＲ標準設計認可を受けたが、これまで発展が遅かった。文在寅（ムン・ジェイン）政府になって脱原発基調に変わり、大型原発に適用する規制がＳＭＲに適用されるなど関連制度も整備されていない影響だ。例えば、放射線非常計画区域の半径がＳＭＲは３００メートルだが、該当敷地の半径２０～３０キロメートル以内に居住する人々にあらかじめ同意を得なければならず、避難所と避難路も用意しなければならない。政府も韓国型ＳＭＲ開発の必要性を認識し、来年までに細部規制を設け、２０２８年に韓国型ｉ－ＳＭＲ開発を完了する予定だ。２０２８年の標準設計認可を経て、２０３５年から本格的に商用化する計画だ。１９日の尹錫悦（ユン・ソクヨル）大統領のチェコ訪問でも、両国はＳＭＲなど次世代原子力研究開発に関する協力を協議する予定だ。

原発の生態系が国内外で回復し、国内企業もＳＭＲ市場への備えに急いでいる。斗山（トゥサン）エナビリティはＳＭＲの主要機器生産のために専用工場を設立し、昨年初めにはＤＬ　Ｅ＆ＣがＸエネルギー持株投資および核心資機材供給のための協約を締結した。ＳＫも早くからエネルギー事業に目をつけ、ＳＭＲ事業などに投資している。２０２２年、ＳＫ（株）とＳＫイノベーションはビル・ゲイツ氏のテラパワーに２億５０００万ドルを投資した。