「管理のサムスン」を突き抜け「技術固執」を貫徹できる最高経営責任者（ＣＥＯ）。

２１日にサムスン電子半導体（ＤＳ）部門の新たなトップに上がった全永鉉（チョン・ヨンヒョン）副会長に対する半導体業界の評価だ。サムスン電子はこの日、全永鉉未来事業企画団長をＤＳ部門長に委嘱したとし、「不確実なグローバル経営環境の下、対内外の雰囲気を一新し競争力を強化するための先制的措置」と明らかにした。これまでの慶桂顕（キョン・ゲヒョン）ＤＳ部門長（社長）は２年半ぶりに退任し、未来事業企画団長兼サムスン総合技術院長を務めることになった。慶社長は最近会社の危機の中で突破口を設けるために自ら辞任の意向を明らかにしたという。

全副会長は漢陽（ハニャン）大学電子工学科とＫＡＩＳＴ電子工学科で修士・博士課程を終え、１９９１年からＬＧ半導体でＤＲＡＭメモリーを開発し、２０００年にサムスン電子に移りメモリー事業部ＤＲＡＭ設計チーム長、開発室長、メモリー事業部長などを務めた。

全副会長がメモリー事業部長兼戦略マーケティングチーム長を務めた２０１４～２０１７年にサムスン電子は世界初の２０ナノ（ナノは１０億分の１）、１８ナノＤＲＡＭの量産に相次ぎ成功し、ＳＫハイニックスやマイクロンのような競合会社との技術格差を２年ほどで維持した。彼は権五鉉（クォン・オヒョン）副会長に続く「超格差の後継者」にも挙げられたが、２０１７年に権副会長が辞任するとＤＳ部門長は金奇南（キム・ギナム）社長が引き継いだ。全副会長はサムスンＳＤＩ代表理事と理事会議長を歴任し、昨年未来事業企画団長として７年ぶりにサムスン電子に復帰した。今回ＤＳ部門長に上がりサムスン半導体の救援投手として登板することになった。

全副会長と近くで働いたサムスン電子元役員は「一般的なサムスンのＣＥＯとは違ったスタイル。技術に対する執拗さがある」と評した。サムスン生え抜きの役員は緻密な管理を重視するサムスン方式を早くから身につけるが、ＬＧ半導体出身である全副会長は技術に対する確信ができれば押し進める実行力が際立っているという。

全副会長の救援登板は２度目だ。サムスンＳＤＩがギャラクシーノート７のバッテリー火災事故で会社創立以来最大の危機に陥った２０１７年に代表理事に就任し品質改善だけでなく主力事業をスマートフォン用中小型バッテリーから電気自動車・大型エネルギー貯蔵装置（ＥＳＳ）などに転換した。彼が代表を務めた５年間にサムスンＳＤＩの売り上げは５兆ウォン台から１３兆ウォン台に２倍以上増え、１兆ウォンの営業赤字から１兆ウォンの黒字に転じた。

マウンドに立つ彼の肩は重い。これまでメモリー業況は半導体市場のサイクルに沿って揺れ動いたが、人工知能（ＡＩ）時代の到来とともにＡＩ半導体用高帯域幅メモリー（ＨＢＭ）が脚光を浴びている。メモリーが汎用製品を超えオーダーメード型高付加価値商品に浮上したのだ。しかしサムスン電子はメモリー世界１位ながらもエヌビディアのグラフィック処理装置（ＧＰＵ）用ＨＢＭを納品できずＡＩ半導体ブームから疎外されている。

一部では全副会長の復帰に対する懐疑的な見方もある。業界では「サムスンが夜を徹して働いてメモリー技術格差を維持した時とは異なるリーダーシップが必要な時期」「ＤＲＡＭ専門家である全副会長がメモリー技術を超えてＡＩ市場の大きな構図を見ることができるかがカギ」と評価する。