◆韓国にすべての責任を負わせる北朝鮮

北朝鮮の悪意で韓半島の軍事的情勢が不安定になると、一部からは「緩衝地帯が消えて一触即発の状況を迎える」という声が聞こえる。これは北朝鮮の望み通りだ。韓半島で敵対行為と武力行使を禁止して平和を維持する秩序は軍事合意でなく、停戦協定と南北基本合意書だ。そして北朝鮮は軍事合意だけでなく停戦協定と南北基本合意書の「常習違反犯」だ。にもかかわらず北朝鮮は韓国が軍事合意を捨てた張本人だと詭弁を並べ、今後の事態の責任まで韓国に負わせようとしている。

北朝鮮は韓国の対応を見ながら好戦的な攻勢に出てくると予想される。米中央情報局（ＣＩＡ）で北朝鮮情報の収集・分析をしていたシドニー・サイラー氏はラジオ・フリー・アジア（ＲＦＡ）のインタビューで「金正恩が来年、尹錫悦政権を相手により攻撃的で致命的な制限的挑発をする可能性がある」と述べた。峨山政策研究院のヤン・ウク研究委員は「北は軍事的脅威を加えながら主導権を握り、すべては韓国が９・１９軍事合意を破棄して生じたという認知戦・ハイブリッド戦を駆使するだろう」とし「韓国国内の政治的な混乱を起こし、来年の総選挙に影響を及ぼす可能性がある」と懸念を表した。

韓国が萎縮して退く場合、南北チキンゲームは北朝鮮の勝利に終わる。悪い行いを正すとして正面対抗すればこれも北朝鮮に巻き込まれることになる。徹底的な対応態勢で北朝鮮の軽挙妄動を抑制しながら、北朝鮮の軍事行動に相応の措置を冷静に実行することが最高の対策だ。

イ・チョルジェ／軍事安保研究所長

【コラム】「９・１９合意」破棄した北朝鮮、狙いは「来年の韓国総選挙介入」（１）