米国半導体メーカーのマイクロンを制裁した中国が、半導体需給に関連し、西側の「集団対応」を阻止するために韓国を狙った世論戦に乗り出した。

官営メディアを通じて、マイクロンの空席を埋めないようにという米国の要求を、韓国は拒否しなければなければならないと主張し、韓米間共助の隙間を広げようとしている。

２９日、国粋主義志向の「環球時報」英字紙「グローバル・タイムズ（Ｇｌｏｂａｌ　Ｔｉｍｅｓ）」は「半導体ジレンマに韓国が実用的にアプローチしない場合、韓国経済が深刻なリスクに直面するだろう」という圧迫性のコラムを掲載した。

コラムは米国で行われた韓国の安徳根（アン・ドクグン）通商交渉本部長と中国の王文濤・商務部長の会談で半導体産業網・サプライチェーン（供給網）関連の協力を強化する方向で合意したとし、両国が半導体協力を強化していくためには韓国半導体メーカーが中国市場での穴を埋めるのは当然だと主張した。

続いて「米国が韓国政府にマイクロンが残した中国市場の空白を韓国のチップメーカーが満たすのを禁じるように要求したとするなら、事実上、韓国半導体メーカーが中国で事業を拡張する機会を奪ったことになる」としながら「このような試みは他国間の互恵的・合法的な商業協力に対する明らかな干渉であり、国際貿易ルールに違反するもの」と主張した。あわせて「中国に烙印を押した米国が韓国経済を袋小路に追い詰めた」と強調した。韓国はマイクロンの空席を埋めてはいけないという米国の要求を拒否するように圧力をかけたといえる。

中国は半導体メーカーであるマイクロンを米国のファーウェイ（華為）制裁と同じ「国家安全保障」を口実に制裁しながらも韓国企業とは分離対応している。２２日、中国外交部の会見で毛寧報道官はマイクロンに適用された安全保障審査が韓国企業に適用される可能性を否定した。その一方で、「米国が他の国に対中国輸出制限を強く迫ることは自身の覇権利益を守ろうとするもの」としながら「このような行為は中国企業の利益だけでなく、他の各国と関連企業の利益に損害を与えるだろう」と強調した。

韓国金融研究院のチ・マンス上級研究委員は「中国が米国マイクロンを制裁したのは二重の布石」としながら「米国のファーウェイと半導体技術制裁を打開する交渉カードとして使おうという意図と、中国の経済強圧を無力化させるための『集団対応』の動きを事前に防ごうとする複合的な試み」と解釈した。最近、広島主要７カ国（Ｇ７）首脳会議（サミット）で、中国の経済的強圧に対抗して集団対応を強化していくことで合意したことに対する事前布石という意味だ。

環球時報はすでに２６日、３面記事を通じて米中半導体戦争が韓国をジレンマに陥れたと強調した。韓国政府に批判的な紙面の意見を集中的に引用して韓米の間の溝を広げることに注力した。環球時報は同日、「核汚染水排出で『さくら』役を買って出た？　ソウルは良心を見つめ直すように」という刺激的なタイトルのコラムを掲載して「福島原発汚染水処理は日本だけの問題ではなく、太平洋は日本の下水道でもない」とし、韓日共助の遮断にも注力した。

一方、香港メディアも中国の韓国圧迫に加勢している。香港明報は２９日、ペンネーム「托勒密」のコラムを掲載し、北朝鮮の核高度化に対応して拡張抑制を強化した韓米のワシントン宣言を酷評した。コラムは「ひとたび中国共産党が台湾の武力統一を決意すれば在韓米軍を牽制（けんせい）することができる北朝鮮という碁石を保有したことは悪いことではない」とし「このために最近数年間、中国政府は口頭上の外交的な言葉を除くと、北朝鮮の軍事活動に大きく反対しなかった」と中国の内心を吐露した。