北朝鮮の１回目の核実験直後に開かれた２００６年韓米安保協議会議（ＳＣＭ）の共同声明で、「ＢＴＳ（防弾少年団）」ほど有名になった「拡張抑制」という言葉が初めて登場した。先週、尹錫悦（ユン・ソクヨル）大統領の国賓訪米期間中に拡張抑制は大韓民国国民が最も多く耳にした言葉で認知度が急上昇した。拡張抑制とは、米国が自国に対する敵の攻撃を抑制するだけでなく、核兵器を含むあらゆる手段を動員して同盟国と友好国に対して抑止力を提供する防衛公約のことだ。

北朝鮮の核・ミサイル脅威に対応するため、韓米は前例のない水準に拡張抑制の強化に向けて力を注いでいる。韓米は北朝鮮の核・ミサイル関連情報をリアルタイムで共有するだけでなく、域内の米核戦力配備・運用現状などに情報共有の範囲を拡大している。危機時の協議を含めた協議体系、韓米共同企画と実行など分野別協力も強化している。「韓米テイラード抑止戦略（ＴＤＳ）」も年内に改正する計画だ。今年２月には北朝鮮の核使用シナリオを想定した「拡張抑制手段運用演習（ＴＴＸ）」を実施し、原子力空母や戦略爆撃機といった米戦略資産の韓半島（朝鮮半島）近隣の展開頻度と強度も拡大している。

拡張抑制の主な対象は潜在的敵国だ。大韓民国国民は韓米の拡張抑制努力を見守りながら、北朝鮮の脅威に対して米国が韓国を保護できるか、いわゆる「同盟保障」を計る。北朝鮮が大陸間弾道ミサイル（ＩＣＢＭ）を完成すれば、米国がソウルを守るためにニューヨークを犠牲にできるだろうか？　韓国国民は１９６１年、フランスのドゴール大統領が米ケネディ大統領にした同じ質問を自ら投げかけてみるだろう。

２０１３年、米空軍の国家安保研究所は「拡張抑制と同盟保障」という論文で、米国が提供する拡張抑制を同盟国がきちんと知らず信頼しなければ同盟保障が十分に管理されず、これによって米国の拡張抑制への努力を難しくし、またはきちんと履行できないようにする恐れがあると警告した。これは米国が望む国際平和と安定に悪影響を及ぼしかねないため、拡張抑制への努力に加えて同盟保障が重要であることを強調している。

韓国国民は、北朝鮮の核能力開発とミサイル発射場面、北朝鮮が軍事力を総結集したような軍事パレード、金正恩（キム・ジョンウン）委員長の攻撃的な発言などを日常的に耳にしている。このような報道は、ほとんどが一気に目を引く刺激的な画面を伴う。国民は米国の戦略資産の展開も数年間見守っているが、これに比べて朝鮮中央テレビなど北朝鮮官営メディアを通じて公開される北朝鮮の挑発内容や対韓国、対米脅迫発言はさらに新しく刺激的だ。現在、北朝鮮の核ミサイル数が約１００発に達する可能性があるという峨山（アサン）政策研究所と米ランド研究所の報告書もあった。

１月３０日、国民の４人に３人は「韓国が独自に核を開発しなければならない」と考えているという世論調査結果が出た。同調査で、米国の核の傘の信頼性は４８．７％だった。米国としては「同盟保障」を管理すべき重要な時期だと判断したのだろう。

【コラム】「拡張抑制」と「同盟保障」、そしてワシントン宣言＝韓国（２）