【中央時評】核が破壊した金正恩の夢
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.03.29 11:10
金正恩(キム・ジョンウン)は北朝鮮を正常な国にしたかった。不良国というイメージを消し世界に出すことができる正しい国の首長になることを願った。その一環で金正日(キム・ジョンイル)の軍優先政策を廃棄し、党と内閣という「正常な」制度を通じて国を統治しようとした。自身の肩書きも金正日が使った国防委員長ではなく国務委員長と呼んだ。非正常に見えるような宣伝と慣行も変えた。北朝鮮の教科書には金日成(キム・イルソン)が縮地法を使ったと記録されていたが、2020年5月に労働新聞は縮地法はないとしてこれを否定した。また、通常の国の首脳のように各種行事に李雪主(イ・ソルジュ)を同行した。2021年には国連に持続可能発展報告書を提出し、2020年の党大会報告書は女性代表者の割合が10%だと突然明らかにしたりもした。
肩書を直し妻を同行させ女性代表の割合に言及するからと正常な国になりはしない。何より正常な国は世界と交流して協力する。しかし核は北朝鮮を世界から断絶させた。欧州のある大学は2016年の4回目の核実験前まで北朝鮮の学生を奨学生として入学させていた。しかし国連安保理制裁が実行されると制裁と関係のない分野なのにこの学生を北朝鮮に送り返した。この青年が自身の奨学金の一部を北朝鮮に送ったことが問題になった。学校はこれを北朝鮮に外貨が流入しないようにする制裁の目的に違反するとみた。金正恩の核は北朝鮮の青年たちの夢を奪った。核開発がなく、そのため制裁もなかったならば北朝鮮の青年たちが海外で新しく有益な知識を習得できただろう。多くの専門家と官僚が海外に出て経験を積み北朝鮮の未来を開拓する力を育てただろう。核により貿易が断絶すればすぐに苦痛を味わうだろうが人材を育てることができなければ北朝鮮の未来まで荒廃する。
外部支援がなくても国民の生存が可能でこそ正常な国だ。しかし金正恩の核開発は住民の暮らしを押し崩した。経済制裁を受ける前には餓死する住民はほとんどいなかった。十分ではないが食事は調達できた。食糧生産が増加し市場流通が円滑だったため援助も大きく必要でなかった。しかしいまは餓死者まで出ている。さらに国際社会が食糧援助を提案しても自力更生するとして受け取らない。ほとんどすべての住民が新型コロナワクチンを接種できていないのにワクチン支援提案まで拒絶する。食糧であれワクチンであれ韓国や西側の援助を受ければ自力更正の失敗を自認することになり、そうなると核保有国として認められにくいと信じるためだ。