米国アリゾナ州に新規工場を建設中の世界１位ファウンドリ（半導体委託生産）企業であるＴＳＭＣが莫大な費用に頭を痛めていることが報じられた。外国企業では史上最大規模で米国に投資してファブ（ｆａｂ、半導体工場）を作って世界的注目を浴びたＴＳＭＣが予想よりも費用がかさみ、米国政府の補助金支援基準も厳しくなって収益性悪化を懸念している。

１４日、台湾の情報技術（ＩＴ）専門メディア「デジタイムズ（ＤＩＧＩＴＩＭＥＳ）」は「ＴＳＭＣがアリゾナ新工場で３・４・５ナノメートル（１ナノメートルは１０億分の１メートル）半導体を安定した収益を出して大量生産するのは容易ではない」と、半導体装備業界関係者の言葉を引用して伝えた。

ＴＳＭＣは昨年バイデン大統領とアップル（Ａｐｐｌｅ）、ＡＭＤ、エヌビディア（ＮＶＩＤＩＡ）など主な米国顧客の最高経営責任者（ＣＥＯ）が出席したアリゾナ工場着工式で４００億ドル（約５兆３８００億円）を投資して工場２つを建設すると発表した。ここで量産された３・４ナノチップが早ければ来年からアップルやエヌビディアなどに供給される予定だった。

問題は現在アリゾナ工場の造成と装備導入が計画よりも遅れている点だ。また、半導体人材不足、建設費用の上昇などＴＳＭＣが解決しなければならない課題は山積している。デジタイムズは「稼働時期が２０２５年より遅れる可能性がある」と展望した。

事実、ＴＳＭＣ創業者モリス・チャン氏は昨年、メディアのインタビューで「米国で半導体を製造するには台湾に比べて費用が追加で５０％かかる」として懐疑的な立場を示していた。だが、米政府の持続的な圧力でＴＳＭＣが現地投資金額を拡大して生産施設拡大に出た。

米国商務省が最近の半導体支援法により３９０億ドル規模の補助金申請受付を始めたが、ＴＳＭＣは補助金申請を巡っても苦悶に陥った。この補助金を受けるためには超過利益を米政府と共有しなければならず、中国などで今後１０年間生産能力を拡大できないという毒素条項があるからだ。

ＴＳＭＣのこのような難しい境遇は米国テキサス州テイラー市に工場を建設中のサムスン電子の悩みとも脈絡を共にする。サムスン電子は早ければ今年末の完工を目指してテイラー市に米国内２つ目の半導フェブを造成中だ。来年からは４ナノメートルの最先端半導体量産にも入る計画だ。この工場への投資金は約１７０億ドル規模となっている。

だが、サムスン電子も商務省が支援する補助金申請を迷っている。韓国政府はサムスン電子・ＳＫハイニックスなど主な半導体企業関係者と面談した後、米国側に「半導体支援法が過度な経営介入につなってはならない」という立場を伝えた状態だ。