チェコの次期大統領であり「戦争英雄」のペトル・パベル氏（６２）が先月３０日、台湾の蔡英文総統（６７）と電話会談を行って協力を約束すると、中国が「故意的にレッドラインを踏んだ」として強く反発した。中国を安保脅威として見ているパベル氏が今年３月に就任すれば反中政策を強化するだろうと観測される中で、今回の電話会談が「台北の『外交クーデター』」（ロイター通信）という評価も出てきた。中国は３１日一日で戦闘機３４機と軍艦９隻を台湾防空識別圏（ＡＤＩＺ）に進入させる大規模武力示威で反発した。

パベル氏と蔡総統の電話会談は３０日午後、１５分間行われた。パベル氏は会談直後、ツイッターに「台湾とチェコは自由・民主主義の価値と人権を共有し、協力を強化することで同意した」とし「蔡総統と対面できることを期待する」というコメントを載せた。蔡総統はパベル氏に「英国ロンドン大学の同窓で生活経験を共有した仲」とし「今後、台湾とチェコの両者関係および地域の議題に対する幅広い交流を望む」と明らかにした。

蔡総統が中国修交国の次期大統領当選者と電話会談を行ったのは今回が２回目だ。２０１６年１２月トランプ米国大統領が就任前に蔡総統と電話会談を行っている。当時トランプ氏は会談直後に「台湾総統が当選祝賀電話をかけてきた」とし「数十億ドルの武器を売りながら祝賀電話も受けてはいけないとは興味深い」というコメントをツイッターに書き込んだ。

特に今回の電話会談は中国の外交攻勢を突破して行われた。先月９日、中国の習近平国家主席はチェコのミロシュ・ゼマン大統領とオンライン会談を行い、「過去１０年間、チェコの対中輸出額は２倍増え、２０１９年中国のチェコ旅行客は２０１３年比２５０％増加した」と中国の経済寄与を強調した。退くゼマン大統領を使ってチェコの対中政策の変化を阻止しようとした格好だ。ゼマン大統領は２０１５年天安門勝戦閲兵式に出席した唯一の欧州連合（ＥＵ）メンバー国の首脳だったほど中国に友好的だ。

反面、パベル氏は正統軍官僚の出身で「反中」志向として知られている。パベル氏は選挙運動期間に中国を安保脅威と見なして中国が経済・技術・軍事分野で中心となる可能性があるが、チェコと価値と戦略的目標が異なるとし、両者関係の発展に注意が必要だと指摘したことがある。また「チェコは中国と貿易を発展させる機会はあるが、貿易規模と潜在力は大きくない」とし「台湾と協力を制限するなど対外関係の原則を調整する必要がある」と述べた。

チェコ参謀総長、北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）軍事委員会議長を歴任したパベル氏は１９９３年ボスニア内戦に国連平和維持軍として参戦し、フランス軍の撤退を助けたこともある戦争英雄だ。２００３年イラク戦争当時にはカタールの米軍司令部に連絡将校として参戦したほど戦場での活躍が多い人物だ。中道右翼に分類されるパベル氏は先月２７～２８日に行われた２次大統領選挙で５８．３２％の得票率で当選した。

電話会談の阻止に失敗した中国外交当局は「言葉爆弾」を投下した。外交部の毛寧報道官は３１日、「中国の数回にわたる引き止めと交渉を無視し、最終的には中国のレッドラインを踏んだ」とし「中国は強烈な不満と決然とした反対を表示し、チェコに厳正な交渉を提起した」と力説した。国務院台湾弁公室の馬暁光報道官は台湾を攻撃した。「民進党当局が『通話』と『写真』を利用して『独立』を企てようと努めた」とし「だが、台湾が中国の一部分だという事実を変えることはできない」と強調した。

武力行動も併行した。通話翌日である３１日、中国軍は午前６時から２４時間の間に戦闘機３４機と軍艦９隻が台湾ＡＤＩＺを脅かした。

香港「星島日報」は１日、「パベル氏の就任によりチェコの政界が『反中』一色に変わり、挑発的な行動を取るだろう」と展望した。チェコは新型コロナウイルス感染症（新型肺炎）の影響で中国人旅行客数が大幅に減り、投資まで下落し、昨年すでに「中国－中・東欧国家地域間協力メカニズム」からの脱退を検討し始めた。特にウクライナ戦争を前後して東欧諸国の間では安全保障が経済・外交など一切を圧倒した状況だ。これに先立ち２０２１年には東欧リトアニアが首都ヴィリニュスに台湾大使館格の「台湾代表処」を認可して中国からの激しい反発を招いた。中国はリトアニアとの外交関係を大使級から代表処級に下げることによって報復した。

人民大学の王義●（木へんに危）教授は「パベル氏就任後、チェコは台湾ＴＳＭＣの半導体投資を誘致して、米国と中国の『デカップリング』傾向に迎合して、米国の武器と投資を引き込むために公開的に中国が主導する協約から脱退を宣言し、反中の最先鋒に立つ可能性がある」と展望した。