「国際的なのけ者」だったサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子がカタールワールドカップ（Ｗ杯）で思いがけない受恵者に浮上した。開幕式では貴賓席の最前列に座って存在感を誇っていたが、サウジアラビア代表が「強豪」アルゼンチンを破って注目の中心に立った。

サウジアラビアは２２日（現地時間）、カタール・ドーハのルサイルスタジアムで開かれたＣ組グループステージ第１節で、アルゼンチンに２－１で逆転勝ちした。国際サッカー連盟（ＦＩＦＡ）ランキング５１位のサウジアラビアがリオネル・メッシ（パリ・サンジェルマン）擁する３位のアルゼンチンを下し、国全体が祭りのような雰囲気だ。サウジアラビアの実力者であるビン・サルマン皇太子は勝利が確定した瞬間、家族と抱擁しあって歓呼する様子をソーシャルメディアに公開した。

ロイター通信は「ビン・サルマン皇太子がＷ杯を通じて世界舞台に再び移動した」としながら「ビン・サルマン皇太子は開幕式でＦＩＦＡ（国際サッカー連盟）のジャンニ・インファンティーノ会長の隣に座って存在感を見せ、サウジがアルゼンチンを破って異変を演出して注目が集まった」と伝えた。ワシントン・ポスト（ＷＰ）は「アルゼンチン戦の勝利でサウジ皇太子の１カ月が勝利で締めくくられた」と評価した。

ビン・サルマン皇太子は今月初めエジプトで開かれた国連気候変動枠組条約第２７回締約国会議（ＣＯＰ２７）への出席を皮切りに、インドネシアで開かれた主要２０カ国・地域（Ｇ２０）首脳会議（サミット）、タイで開かれたアジア太平洋経済協力（ＡＰＥＣ）会談などに出席した。１７日には韓国を訪問して主要な政・財界要人と会った。そして訪日を取り消して２０日カタールＷ杯開幕式に姿を見せた。

ＷＰは特にＷ杯の出席に注目した。ビン・サルマン皇太子は開幕式が終わってカタール対エクアドル戦まで観戦したが、当時カタール代表を意味する赤紫色のマフラーをしてカタールを応援した。ＷＰは「２０１７～２０２１年カタールに対するアラブ国家の断交を主導したサウジがカタールに兄弟愛を見せた」と評した。カタールのタミーム・ビン・ハマド・アール＝サーニー国王はサウジアラビアがアルゼンチンに勝つとサウジアラビアの国旗を振ってこれに呼応する反応を示したとＷＰは伝えた。

ビン・サルマン皇太子のこのような歩みが注目されるのは、過去の一定期間、世界的な非難を受けた人物だからだ。ビン・サルマン皇太子は２０１８年に起きたサウジ反体制ジャーナリストのジャマル・カショギ氏暗殺事件の黒幕だという疑惑を受けている。人権を重視する米国のバイデン大統領は「国際社会でサウジアラビアをのけ者にする」と公言さえしていた。

しかし、今年初めロシアのウクライナ侵攻でエネルギー危機が深化し、国際外交舞台は異なる流れで回っている。ビン・サルマン皇太子は今年夏にバイデン大統領、フランスのマクロン大統領らと会った。中国の習近平国家主席が来月サウジアラビアを訪問する予定というウォール・ストリート・ジャーナル（ＷＳＪ）の報道も出てきた。

ビン・サルマン皇太子は１７日にはカショギ氏暗殺事件関連の訴訟で米国から免責特権も認められた。ただし、カタール・ドーハを訪問中のトニー・ブリンケン米国務長官はこれに関連して「サウジと米国の関係再設定検討は現在進行中」としながら両国関係とは無関係という立場を明らかにした。ロイターは「ビン・サルマン皇太子がまだ西側に完全に政治的に復活したとはみることはできない」と伝えた。