ソウルには「テヘラン路」という通りがある。イランの首都の名前を取った通りだ。先月１３日、イラン女性のマフサ・アミニは家族とともにテヘランに親族と会いに来てヒジャブを正しく着用していないという理由で道徳警察に逮捕された。ヒジャブはムスリム女性が髪の毛と首、胸の部分を隠すために使うスカーフだ。顔とさらに全身を覆わなければならないブルカ、顔の一部も隠すチャドルに比べるとそれでも顔全体を出すことができる。

宗教的な理由で着用するというが、実際にイスラムの経典であるコーランに女性はヒジャブを使ったりブルカを着なければならないと直接的に書かれているわけではないという。コーランはただムスリムの服装は謙虚でなければならないとする。ここでのムスリムとは女性だけでなく男性まで含む。すなわち、本来の服装規定は男女ともに概ね共通して適用されるということだが、解釈と運用を通じて女性にだけより厳格な服装を要求することになったわけだ。ムスリムの男性は顔を隠したり髪の毛が見えないように覆ったりはしないという話だ。

新型コロナウイルスの流行によってマスク着用が義務事項となり、ムスリム男性に向け「女性だけでなく男性も強制的に顔を隠すことになったが気持ちはどうか」という多少挑発的な質問がオンライン問答サイトに上げられた。これに対し多くのムスリム男性の一次的反応が「ムスリムの女性が顔を隠すのは強制事項ではない」というものだった。だがこうした返事に対しあるムスリム女性は、自分は顔や髪を隠さなかったという理由で侮辱やさらに暴行され女性を周辺で目撃したりしたと書いた。やられる立場の人でなければ感じられないことがあるということだ。

顔はともかく髪を隠すよう強制する国のひとつがイランだ。法律で女性は公共の場所でヒジャブを着用するよう規定している。昨年８月に聖職者出身の大統領が就任して雰囲気が急速に抑圧的になったという。逮捕された当時アミニはヒジャブを着用しており、さらに家族と一緒にいた。ヒジャブを不適切に着用していたというのが逮捕理由だった。その後拘禁施設で倒れ意識不明状態で病院に運ばれたアミニは３日後に死亡した。まだ２２歳だった。アミニは弁護士になりたいと言っていた。

警察はアミニが心臓まひを起こしたとした。しかし体には激しいあざができており、医療陣は心臓まひではなく外傷性脳損傷を治療したと話した。警察がアミニの頭部を拘置所に向かう車で棍棒などを使いひどく殴打したという証言も出てきた。イラン法医学当局はアミニが幼いころに病んだ脳疾患のため死亡したと公式に明らかにした。だが市民はこうした説明をそのまま受け入れそうにない。

【コラム】イランのヒジャブ、他人事ではない＝韓国（２）