【コラム】韓国民主党のえさに大統領が食いついてしまった
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2022.09.29 11:37
「えさに食いついたのだ」。
映画『哭声/コクソン』(2016年)でファン・ジョンミンが吐いたこのせりふが最近になりたびたび頭の中をぐるぐる回る。通貨価値急落に資産市場崩壊など世界で同時多発的に哭声が聞こえてくる厳しい時期に、まるで自分たちには何の問題もないかのようにすでに10日近く意味もない「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領不適切発言議論」がすべての問題を吸い込んでいたためだ。最初から起きなかったならもっと良かったが、大統領のニューヨークでの発言は別の見方をすればいくらでも笑い飛ばせる小さなハプニングにすぎない。しかしなぜ米国歴訪中に共同取材カメラにとらえられた大統領の非公開発言が、その内容を聞き分ける全国民の聴力テストとして広がった末に与野党間だけでなく韓国社会全体を激しい対立にまで追いやるのだろうか。
支持する陣営により責任の所在に対する解釈はそれぞれかもしれないが、私はどうしても野党「共に民主党」(あるいはMBC)が投げたえさに大統領がすぐに食いついてしまったことが今回の事態の本質のように思える。自ら事態を広げたという話だ。大統領室の疑問の通り、たとえ「大統領揺さぶり」という不純な意図で始まったのが事実だとしても、大統領室の対応戦略もやはり誤りでも相当に誤っている。マイクがオンになっていたことを知らず普段の品の良くない言葉遣いを露出したのはそれ自体が尹大統領の誤りだ。弁解の余地はない。ここに金恩慧(キム・ウンヘ)広報首席秘書官をはじめとする大統領室広報ラインの足並みのそろわない不適切な言い換えで事態をまともに収拾するゴールデンタイムを逃してしまったのも深刻な無能だ。いくらそうだとしても大統領が謝ったならそれまでだ。野党であれMBCであれ大統領の恥ずかしそうな謝罪にもかかわらず、無理に国政の足を引っ張り続け米国まで巻き込んで同盟毀損を試みたとすればむしろ民心の逆風を浴びただろう。