【時視各角】「ペロシ議長パッシング」を見る別の視線=韓国
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2022.08.16 11:04
韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が3日に訪韓したナンシー・ペロシ米下院議長に会わなかったことをめぐり、さまざまな声が出ている。ペロシ議長は訪韓の前、中国の反対の中で台湾を訪問し、習近平政権の人権弾圧などを強く糾弾した。このため尹大統領の「ペロシ議長パッシング」は「中国を意識」した結果であり、米国に対する欠礼であり、韓米同盟を毀損する失策というのが批判論の要旨だ。
一見、一理ある主張だ。しかしこの論理は避けるべき大きな罠にはまった感じだ。ペロシ議長と米国を同一視した誤りがそれだ。ペロシ議長の台湾訪問についてはバイデン大統領自身と彼の外交・安全保障参謀、米軍部、そしてニューヨークタイムズ・ワシントンポストなど主流メディアの多くの論客が一斉に反対した。ウクライナ戦争を通じてロシアと間接戦争中の米国としては、中国を不必要に刺激してはいけないというのが核心論理だった。中国はロシアの最大友邦でありながらも軍事物資は与えなかった。予想よりウクライナ戦争が長期化し、ロシアの武器庫は底をついた。このような時に中国が攻撃用武器、特にロシアが懇請するドローンを渡せば戦争様相が変わる。さらにペロシ議長の訪問で台湾海峡内の緊張が高まり、偶発的な衝突が発生する場合、第3次世界大戦に飛び火することも考えられる。3期目を確定する11月の党大会を控えた習近平主席としては、米国に対する断固たる姿を見せなければならない状況だ。わずかな衝突にも中国が強く対応する公算が大きいということだ。台湾海峡で米中が衝突する場合、米国は欧州ではロシアと、アジアでは中国と2つの戦争を同時に進めなければならない。米軍部が恐れる最悪のシナリオだ。今年82歳で引退を控えたペロシ議長が台湾を訪問するのは「人権守護者」というイメージを残そうという欲のためという見方が多い。ペロシ議長の訪問をめぐりニューヨークタイムズの著名なコラムニスト、トーマス・フリードマン氏は「完全に無謀で、危険で、無責任」と批判したのもこのためだ。中国を嫌悪するトランプ前米大統領までが「ペロシ議長の台湾訪問は間違っている」と指摘した。
こうした理由でバイデン政権はもちろん、アジア周辺国もペロシ議長の台湾訪問に否定的な立場を表した。実際、オーストラリアのウォン外相は「すべての関連国が緊張緩和のために何をするべきか苦心しなければならず、誰もが台湾海峡の平和と安定を望む」とペロシ議長の訪問自制を要求した。