【時視各角】大韓民国の法治を否定した罪
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2022.07.26 10:59
自らを「平壌(ピョンヤン)市民キム・リョンヒ」と表現する韓国居住12年目の脱北民女性がいる。韓国に密航して2カ月間働けばお金を稼いで平壌に戻ることができるというブローカーの話にだまされて入国したが、韓国で住む意思がまったくないから家族が住んでいる平壌に送還してほしいというのがキム・リョンヒさんの一貫した要求事項だ。2016年にはソウルにあるベトナム大使館に飛び込んで亡命を求めたが、拒否されて韓国警察に逮捕された。キムさんはこのことで国家保安法上の潜入脱出の疑いが適用されて裁判にかけられた末に釈放された。北朝鮮外交官出身の太永浩(テ・ヨンホ)議員はキム・リョンヒさんのように北朝鮮に戻ることを希望する脱北民を送還し、代わりに国軍捕虜や韓国人抑留者などを返してもらうことを主張する。
今年初め、東部戦線警戒網を突き抜けて北朝鮮に行った体操選手出身のもう一人の脱北民キムさんは実に残念な場合だ。キムさんは高さ3メートルの鉄網を越えて亡命し、同じルートで再び北朝鮮に戻った。知人の証言によると、約1年余りの韓国生活に適応できず北朝鮮行きを選んだようだ。脱北民の中にはそのような人がたまに存在し、実際に中国を経て北朝鮮に戻った場合もある。競争社会に慣れない脱北民にとって韓国社会は決して容易いところでないだろう。体操選手キムさんを「残念な場合」と表現したのは、彼が北朝鮮に戻って生きようとしていた目標を成し遂げることができなかったという話を信頼できる対北朝鮮消息筋から聞いたためだ。それが脱北犯罪者に対する処刑だったのか、「新型コロナ汚染地域から越えてくるすべての動くものを射殺せよ」といった防疫指針によることなのかは分からないが、彼は越北後長い時間を生きることができなかったという。人道的動機から出された太永浩議員の提案が実現することが難しい理由をこのような事例が証明する。