【中央時評】北朝鮮で起きる静かな革命(2)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2021.12.08 10:41
社会主義の価値観は市場と出会えば風の抜けた風船になる。ソウル大学のイ・ジョンミン-チェ・スンジュ教授と私、そしてコロンビア大学のイ・ソクべ教授の共同研究によると、脱北民は韓国出身の住民よりはるかに平等志向的だが、唯一そうではないグループがある。それが北朝鮮にいた時に市場活動を行っていた脱北民だ。彼らは他の人々と一緒に集めたお金を分け合わせる経済学の実験で、韓国出身の住民のように自分の分を確実に取ろうとした。市場活動が集団主義価値観を腐食し、個人主義と私的所有意識を育てるということだ。同時に市場は人間の能力をのばすことができる自由な空間だ。結果が成功的なら金持ちになるが、失敗すれば自身が責任を負わなければならない。市場はこのように受動的人間を能動的主体に変貌させることによって社会主義体制の根本を切り崩している。
市場革命の元祖は中世が近代に移行する時の商業革命だった。当時の学者は商業の発達がもたらす未来社会に関しては激しく意見を戦わせたが、既存の秩序が解体されるという点では意見が一致していた。特にモンテスキューとアダム・スミスは商業がもたらす精神と社会の変化に着目した。モンテスキューによると、商業は知識を浸透させて構成員間の疎通を促進し、社会に分別と秩序という「穏やかな習俗」を生む。アダム・スミスも商業は節制の徳を育てて独立心を高揚させると主張し、その根拠として欧州における商業発達の程度と国民の道徳心が比例する点を挙げた。
1990年代中盤の苦難の行軍期に始まった北朝鮮の市場化は金正恩(キム・ジョンウン)の市場統制で二度目の危機に直面している。第一の危機は金正日(キム・ジョンイル)が市場抑圧政策を展開した時だ。しかし2009年貨幣改革で頂点に達したこの政策の結果、市場が大勝を収めて金正日は大敗を喫した。このためなのか、金正恩は最初は市場を抑圧せずに利用しようとしたが、2019年以降は市場統制に転じた。ハノイ会談の結果とコロナ事態による戦略的後退なのか、さもなければ市場化が招く変化を恐れるあまり社会主義に戻ろうとする試みなのかはよく分からない。しかし確実なのは後者は失敗するという点だ。スターリンは2000万人を犠牲にして市場社会主義を覆して社会主義に復帰したが、いまの金正恩にはそのような力はない。金正恩ではなく市場が北朝鮮の大勢だ。彼もこの静かな革命の一行為者にすぎない。