【中央時評】北朝鮮で起きる静かな革命(1)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2021.12.08 10:39
1996年6月のロシア大統領選挙を控えて、米国はパニックの雰囲気だった。共産党候補であるゲンナジー・ジュガーノフが当時ロシア大統領のボリス・エリツィンを抑えて当選する可能性が高そうにみえたからだ。そうなるとロシアは社会主義に回帰し、国際秩序は再び冷戦に戻るのではないかと懸念された。事実、すべての指標によればジュガーノフの勝利は確実に見えた。ソ連解体後1995年まで、ロシアの国民所得は4割も減った。所得不平等は著しく悪化し、ソ連末期には北欧水準だったジニ係数は1990年代中盤の南米水準に急騰した。さらに共産党は大統領選挙1年前に行われた総選挙で圧倒的な第1党に躍進した。相当数の米国知識人は歴史的終焉を告げたとみられた社会主義がロシアで再誕生するのは避けられないと判断した。
だが私はそのようには考えなかった。なぜなら市場がもたらした底辺革命を目にしていたからだ。1990年代初め、モスクワでの現地研究が終わろうとするころ、私は息子用のプレゼントを買うためにロシア製おもちゃを探し回った。いろいろな店を回ったものの徒労に終わり、いざ立ち寄ったところが「ジェーツキー・ミール」という児童用品デパートだった。ところがこのデパートは1階を除いてすべて空きテナントだった。その階の真ん中には巨大なガラスケースの中に貴重な製品が展示されているかのように数多くの人々が集まっていた。人々の間をかき分けて近寄ってみると、男女こども用の輸入靴が1足ずつあるだけで私は脱力した。しかしこれまで見たことがない彩色の靴の美しさに、子どもを持つロシアの親たちの強烈な視線が私の心に突き刺さった。ここは単なる製品展示場ではなく、資本主義に忠誠を誓う空間だった。なんとかして金を儲け、あのように美しい靴を買いたいという決断の現場だった。そのようにしてロシア人の心の奥深く、社会主義は完全に、そして不可逆的に解体されていた。結局、エリツィンはジュガーノフを破ってロシア第2代大統領になった。