北朝鮮が二重基準と敵対視政策撤廃を南北関係改善の条件に掲げて韓国を圧迫する中、国連で韓米同盟の防衛力強化の努力を露骨に非難した。米国との対話再開の可能性に備えた交渉力向上の試みで、米国に向け先に核を縮小せよとも主張した。

◇北朝鮮、韓半島の米核資産展開を非難

北朝鮮の金星（キム・ソン）駐国連大使は１１日、軍縮問題を扱う国連第１委員会で韓半島（朝鮮半島）緊張の原因を米国の核脅威と指摘し、「米国と韓国の同盟の軍事活動は制約を受けないまま活発になっている」と話した。「中でも最近のミサイル指針解除がそうだ」としながらだ。

彼はまた、「米国は原子力空母と原子力潜水艦などを時に韓国や近隣に配備している」と非難するなど戦略資産展開を問題にした。金大使は「北朝鮮の自衛的抑止力強化だけ挑発と批判を受け米国と韓国の同盟の軍事活動は問題にしないならばこれは韓半島の破壊的不均衡につながる」として戦争勃発加速化にまで言及した。

米国を狙ったが、事実これは韓国に対する要求ともみることもできる。特に同盟をはばかることなく狙ったのは「同盟の一方である韓国が考えを変えれば状況が変わるのではないか」という話と変わらない。

◇「拡張抑止強化」韓米首脳の合意によるもの

戦略資産展開だけにしても「核の傘」など拡張抑止力強化と直結する問題だが、これは５月の韓米首脳会談の結果としても言及された。

共同声明には「文在寅（ムン・ジェイン）大統領とバイデン大統領は韓米相互防衛条約に基づく韓国防衛と韓米連合防衛態勢に対する相互公約を再確認し、バイデン大統領は米国が使用できるあらゆる能力を使って拡張抑止を提供するという公約を確認した」とされている。

金大使が指摘したミサイル指針解除もやはり当時首脳会談で合意した事案だ。結局北朝鮮は文大統領に向け米国との同盟と北朝鮮との関係改善の中から選択しろというメッセージを送ったのかもしれない。

◇中国叩きに北朝鮮が騒ぐ

特に北朝鮮が最近中国との密着を進める姿勢を見せる中で米国の対中牽制の動きも非難して出た。

米国・英国・オーストラリア３カ国の安保協議体「ＡＵＫＵＳ」の発足と関連し、金大使は「米国が非核兵器国のオーストラリアに原子力潜水艦技術を移転することにしたのは米国が自国の利益のためなら国際的非拡散義務にとわられないという点を再び見せた」と話した。

また「世界覇権維持を目標にした米国の露骨な武力誇示、頻繁な軍事演習と戦略資産の活発な移動は１９６０年代の冷戦を連想させる」とした。今月初めに米英日の空母４隻と６カ国の艦艇が南シナ海で展開した「航行の自由」作戦などを意識したとみられる。

このように米国の中国叩きに北朝鮮が反発するのは、米中間の戦略競争構図で米国に向けた交渉力を高めようとする試みとみられる。中国もやはり韓半島（朝鮮半島）問題に対する影響力を拡大することが米国を相手にする時に有利だ。また、北朝鮮が望む制裁解除に対して米国がびくともしない中で北朝鮮には中国との協力が経済難突破に向け緊要なのも事実だ。

◇北朝鮮「責任ある核保有国」既定事実化

金大使がこの日「核兵器の完全な除去に向けては核兵器を最も多く保有した国が先に核縮小に向け真摯な努力をしなければならない」として米国に優先的核縮小を要求したのも目に付く部分だ。米国と非核化交渉ではなく同等な核保有国として軍縮交渉をするという意味が背景にあるためだ。

オーストラリアに対して「非核兵器国」うんぬんしたのも同様だ。非核兵器国は核拡散禁止条約（ＮＰＴ）によりいかなる種類の核兵器も開発したり保有しないと約束している国だ。北朝鮮はＮＰＴ脱退の意思を明らかにし核武力完成を宣言して久しい。金大使はこの日「責任ある核保有国として」という表現も使った。

この日はちょうど青瓦台（チョンワデ、大統領府）の徐薫（ソ・フン）国家安保室長が終戦宣言などに向けた韓米間協議に向け米国に到着した日だった。奇しくも韓国政府が南北首脳会談などに向け本格的な対米説得戦に出た日に北朝鮮は同盟叩きを通じて自らの価値を高める戦術を駆使した格好だ。

◇徐薫室長がワシントンに着いた日…

直前の１１日に北朝鮮の金正恩（キム・ジョンウン）国務委員長は３大革命展示館で開催された国防発展展覧会「自衛－２０２１」での記念演説で「われわれの主敵は戦争そのものであり、南朝鮮（韓国）や米国、ある特定の国や勢力ではない」としながらも国防力強化を強調した。

また「米国は最近になりわが国に敵対的でないとのシグナルを頻繁に発信しているが、敵対的でないと信頼できる行動的根拠はひとつもない」と強調した。言葉より行動に出よという意味だ。

これと関連し金大使は国連での発言で「米国は積極的演習と朝鮮半島および周辺に対する多様な核戦略資産展開を永久的に中断せよ」と既存の要求を繰り返した。