【コラム】月で広がる米中宇宙覇権戦争(2)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2021.10.05 11:33
1960年代、米ソは380キログラムを超える月の原石を掘り出してきた。そこにはチタンをはじめとする経済価値の高い鉱物が多くあるが、その中で最近注目されているのが核融合発電用エネルギー源のヘリウム3だ。ヘリウム3は地球初期に宇宙空間にすべて散ってしまったが、月はその正反対だった。太陽から絶えずやってくる粒子の風(太陽風)がこれを月面に蓄積していたのだ。嫦娥の研究責任者は、スペースシャトルほどの探査船が月と地球を3往復してヘリウム3を運んでくれば人類が1年使えるエネルギーを作れるだろうと話した。月の表面にある量は、人類が数世紀にわたり使えるエネルギーだ。さらにヘリウム3は放射能の恐怖から自由なエネルギー源だ。問題は、これを採掘し核融合発電で電気を作る技術はまだないということ。それなら彼らが月の極地に行く理由は何か。そこには永遠に日が差さない地域がある。クレーターの縁にある山脈はその内側斜面に日差しが入ることを防ぐ「永久陰地」だ。こうした場所は過去に彗星と小惑星が衝突して残った氷が広がる。南極エイトケン盆地がそうだ。例えば国際宇宙ステーション(ISS)に水を持っていくには1リットル当たり2000万ウォン、月表面までは21億ウォンの費用がかかる。人間が生活し作物を育てるのに水のない世界は想像しにくい。水を電気分解すればロケット燃料と酸化剤として使える。だから地球であふれている水は月では貴重だ。氷状態の水がある南極を彼らがもの欲しげに見る理由だ。
5月に韓国は米国が主導するアルテミス連合の一員になった。この連合は月と火星、彗星、小惑星に関する平和的探査と資源活用に向けた協力の枠組みだ。アルテミス計画は段階別になされる。無人(2021年、1段階)と有人月軌道飛行(2023年、2段階)で技術検証を終え、有人月着陸(2024年、3段階)に挑戦する。そして2024年に白人女性と有色男性宇宙飛行士がアポロ17号の1972年以降で初めて月を踏んだ後、1週間にわたり科学探査を遂行する。これと同時に欧米、カナダ、日本は月軌道ステーションを建設する計画だ。「ゲートウェイ」と呼ばれるここは、アルテミスの宇宙飛行士が地球から到着して着陸船に乗り換える乗換駅であり、彼らが休んだり働いたりする、長期科学任務と有人探査に向けた中間基地だ。乗務員はここから乗船し(2026年、4段階)第5段階以降本格的に月南極に基地を建設する。このため韓国政府と国会が有人宇宙計画を承認するのか、気になる。